第6回千葉県吃音相談会&学習会 午後の部 担当者対象

 11月30日の千葉県吃音相談会&学習会の報告をしています。
 午前は保護者、午後はことばの教室の担当者と対象を分けていました。対象がはっきりしている方が話の内容が絞れるからです。もちろん、両方に参加してもいいことにはしていました。
 午後は、担当者対象の時間です。担当者のほとんどの方が午前中から参加していたので、僕の3つに分かれる人生については再度時間をとることなく、始めることができました。
 僕は、僕の人生を賭けて、吃音について考え、取り組み、提案してきました。論文に書いてあるからとか、海外の文献や専門書などからの知識ではなく、自分の体験を通して、考え、学び、身体に染みこんできた納得できたことだけを伝えてきました。3歳から小2までの僕は、どもっていましたが、元気で明るく活発でした。小2の秋の学芸会から僕は変わりました。おそらく担任の配慮だったのでしょうが、どもらないで済むよう三人で言うせりふでした。そのことで、「僕がどもるから、セリフの多い役を外されたのだ」と、僕は吃音の悩みの深い淵に落ちました。それからの暗黒の時間は、学童期・思春期、そして21歳まで続きました。
 よかれと思っての配慮が、生きる力を奪ってしまう可能性があることは、心に留めておいてほしい。直接どもる子どもにかかわる担当者には、どうしても伝えたいことです。
 大切なことを伝えた後は、質問タイムです。
 事前にもらっていた質問は、下記のとおりです。

・かなりどもるのに、子ども自身は困っていないと言う。そのような子どもにはどう対応したらいいのか。
・随伴症状がかなりあるときの対応はどうすればいいか。
・親の相談を、伊藤さんがどう対話していくかを見たい。
・吃音の原因を「体質」だとする記事を新聞がリーフレットかで読んだが、どう思うか。
・吃音のグループ学習の進め方について知りたい。

 これ以外にも、たくさん質問が出されました。ひとつの話題から次の話題が生まれてくるのは、直接出会い、話をし、対話を続ける醍醐味だと言えます。吃音は人生のテーマとして、ちょうどいい。吃音のテーマが生きる力となるために、子どもには、正しい情報を伝え、ともに考え、ともに取り組む担当者であってほしいと思います。不確実なこの時代に生きる子どもたちに、生きる力をつけたい、そのために背中を押すのが、担当者の役割でしょう。午後1時から始まって4時まで、話は尽きませんでした。
僕の個人的な体験を話し、聞いてもらい、振り返ることは、僕自身の大切な体験になります。その体験をまたどこかで話したり、書いたり、他者の体験や考えを聞き、さらにメタ認知を働かせて振り返ることで、体験したことが経験になり、学びと変わっていくことを実感しました。
 今年も残り1ヶ月となったこの時期、こうして吃音について、たくさんの質問をもらい、自分の体験を通して考えたことを話す機会をもらえること、本当にありがたいことだと感謝しています。
 
 今年の公式のイベントは、これで終わりです。来年は、1月11・12日、東京で、仲間のことばの教室の担当者と「どもる子どもの非認知能力を育てる」についての学習と、夏の講習会の準備のための合宿。そして、合宿の翌日、1月13日は、東京都北区の北とぴあで、「伊藤伸二・吃音ワークショップin東京」で、始動します。ことばの教室の仲間との、取り組みたいテーマがはっきりしてきました。12月は、その準備期間になります。80歳を過ぎましたが、まだまだ学びの「薪」は残っているようです。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/12/04

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