はじめに

2019年5月5日 子どもの日に  伊藤伸二

ぼくたちのホームページを訪れてくれた君、ありがとう。

君は、「ことばがつまったり、言いにくかったり、音をくり返したり」するんだね。それは、ぼくが子どもの頃は「どもり」といっていた。このことばは、今はあまり使わなくなって、「吃音(きつおん)」というけれど、意味は同じだ。ぼくは、「どもり」ということばがなくなるのはいやなので、よく「どもり」を使うけれど、「どもり=吃音」と知っておいてほしい。

君が、どもり、吃音(きつおん)について知りたいと、このページを開いてくれたことがとてもうれしい。ぼくは、自分のことを「どもり名人」と言っている。おそらく世界で一番たくさんのどもる人や、どもる子どもと会っているからだ。そして、ずっとどもりのことを考え続けてきたからだ。そして、どもっているけれど楽しく幸せに生きているからだ。ぼくは、今年、75歳になったけれど、21歳からずっと吃音(どもり)について考え、取り組んできた。これまで考えてきたこと、ぼくが出会ったたくさんのどもる子どものことを、ぜひ君たちに伝えたい。

だいぶん前にこのホームページをつくったけれど、忙しくてなかなか続けて書けなかった。今年から、書いていくからぜひ読んでほしい。また、知り合いの子どもや、君や友だちのお母さん、お父さん、そして、学校の先生に知らせてほしい。一緒にどもりについて考えていきたい。全部書き切ってそれをホームページにアップしてもいいんだけれど、少し時間がかかりそうだから、ぼちぼち書いていく。ときどき、ホームページをみてほしい。

ぼくは、21歳の夏に、初めて同じようにどもる人と出会ってから、どもりの勉強をし始めた。それから50年以上、どもりに取り組み、どもりについて考え続けてきた。

どもる人の会や研究会をつくり、どもる人の世界大会を初めて京都で開き、国際吃音連盟という国際組織を作った。また、子どものための 吃音親子サマーキャンプ は今年で30年になる。また、島根、静岡、岡山、群馬、沖縄、千葉などでも、どもる子どもとキャンプを長年してきた。世界の、日本のどもる子どもたちやどもる人にたくさん会ってきた。たくさんの人と出会って、どもりにどのように取り組めばいいか、ぼくなりに整理ができた。

だから今、ぼくが50年以上考え行動して、失敗したこと、とてもよかったことを、君のようにどもることで、吃音(きつおん)について知りたい、考えたい、困ったり、悩んだりしている人に伝えたい。

このホームページでは、少しずつ、ぼくの子どものころの体験や、たくさんのどもる子どもの体験や考えを紹介する。また、知っておいた方がいいどもりの知識についても紹介したい。子どもの頃に、どもりの正しい知識や考え方を教えてくれる人がいたら、ぼくは、違う小学校、中学校、高校時代を送れただろうと思うからだ。悩み方に上手下手と言うのは変だけれど、ぼくは逃げてばかりいたから、損な悩み方をしてきたと思う。人間は悩みながら生きていく。悩んでもいいけれど、悩みが君にとって意味のあるものになるために、君とどもりについて、いっしょに考えたい。ちょっと違った見方が、君に広がればいいなあと思う。

学校生活やクラブなどで、困ったことがあったら、えんりょなく相談してほしい。この日本吃音臨床研究会のホームページには、「お問合せ」のコーナーがある。ご家族や先生に問い合わせ方を聞いて、そうだんのメールを送ってくれれば、せんぱいとして一緒に考えたい。また、こんなことを体験した、こんなことを考えているなどについても、「お問合せ」のコーナーからメールをしてほしい。たくさんの友だちと、交流ができればいいね。

とにかく、ひとりで悩まないでね。君はひとりじゃない。たくさんの仲間や、君のことを考えてくれる大人がいる。ぼくたちは、いつも君の味方だから、ときどき、このホームページを見に来てほしい。これから記事をどんどん増やしていくよ。君からも、こんなホームページにしてほしいという希望があったら、「お問合せ」のコーナーに書いてほしい。みんなで作っていくホームページにしたいと考えている。