エルヴィス・プレスリーに隠された言語障害の秘密
「スタタリング・ナウ」2015.10.24 NO.254 には、もうひとつ、興味深い記事が掲載されています。エルヴィス・プレスリーに関する話です。プレスリーがどもっていたということは、あまり知られていないようですが、記事にあるように、1956年のインタビューで、プレスリー自身が、どもるんだと語っています。曲を紹介する時にはゆっくりと話し、言葉につまると話を中断して長い間を置く、記事ではそれを、どもるのを避けるためのテクニックだったのかもしれないと書いています。僕は、プレスリーのサバイバルと呼びたいです。
エルヴィス・プレスリーに隠された言語障害の秘密
その美しい歌声が世界中の何百万人もの人々に愛されたエルヴィス・プレスリーは、成功への道のりの中で、吃音の問題を克服しなければならなかった。しかしながら、「ロックンロールの王者」であった彼が吃音の問題を抱えていたということを知っている人は少ない。
8月11日に新しく発売された「ロックンロールの王者エルヴィスの伝説に隠された愛と映画そして音楽の驚くべき真実」(仮訳)という本は、プレスリーの吃音の問題を明らかにしているだけではなく、彼のイメージとは裏腹の驚くような発見についても書いている。
アカデミー賞に輝いた映画、「英国王のスピーチ」で描かれたジョージ6世だけが言語障害を抱えた「キング」ではなかったのだ。エルヴィス・プレスリーは幼いころから成人期の初めまで、何かにひどく興奮するとどもっていたそうだ。
エルヴィスの幼いころのガールフレンドであったメアリー・マグダレン・モーガンは、2007年のインタビューで、エルヴィスが小学校時代よくどもっていたと語っている。「彼はいつもそわそわと不安げで、じっと座っていることができなかったの。彼はどもっていたけれど、言っていることがよくわからないということはなかったわ。『ああ…ああ…ああ』といったような感じで。」
どもる人たちにとって、歌うことは言語療法のようなものである。エルヴィスは幼いころに歌を始め、10歳のときに初めて聴衆の前で歌った。エルヴィスが吃音であったために、歌うことを勧められたのだと言う人もいる。恐らく、エルヴィスが子どものころに歌を始めたことは、意図的であってもそうでなくても、自信を持って話すことや、言語障害をコントロールするのに役立っただろう。
しかしながら、エルヴィスが成人になってもどもっていたということが、プレスリーが歌手としてキャリアをスタートした頃の「ルイジアナ・ヘイライド」という番組の録音でわかる。エルヴィスが歌の合間に観客に向かって話している時もありのままどもっている。エルヴィスはどもり始めると、話を一時中断し、それ以上どもらないようにと、少し言葉を変えて再び話を続けていた。
例えば、1955年8月20日、エルヴィスはライブの中で「メイベリン」という曲を次のように紹介している。”We got a song right now friends,that we’d like to do for you.We ain’t been doing it but-but-but-but one-one,yeah…We hadn’t done it but once on The Louisiana Hayride.We only learned it a couple of days ago…”(いいかいみんなに聴いてほしい歌があるんだ。でも、でも、でも、でも、い、い、い、……いち度「ルイジアナ・ヘイライド」で歌っただけなんだ。二、三日前に覚えたばかりでね…)
1956年8月のインタビューで、エルヴィスは自分がどもることを認めている。「僕は興奮すると少しどもるんだ。‘when’や‘where’とか‘w’や‘i’で始まる単語はどれも言いにくくてね。」
他にも映像やライブ録音でエルヴィスがどもっていたことが明らかになっているが、彼が国内だけでなく世界的に有名になった頃には、どもりをコントロールする方法をほぼ身につけていたようだ。1956年終わりから1957年初めにかけて「エド・サリヴァン・ショー」に三度出演しているが、どもっていない。エルヴィスは曲を紹介する時にはゆっくりと話し、言葉につまると話を中断して長い間を置いている。それは彼にとって、どもるのを避けるためのテクニックだったのかもしれない。
エルヴィスは吃音の問題は自分で対処するという道を選んだ以上、芸能人として成功するという夢を吃音によって阻まれるようなことがあってはならなかった。吃音の問題で苦しんでいる人たちは、世界で最も成功した歌手のひとりと、このように個人的な問題を分かち合っていると知れば、感慨深いものがあるだろう。2015年8月11日
Trina Young著「ELVIS BEHIND THE LEGENDの書評より
http://www.examiner.com/article/elvis-presles-hidden-speech-impediment-and-other-secrets-revealed-new-book(金谷千菜美・進士和恵訳)
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/03/30


