私と『スタタリング・ナウ」』(8)

 昨日の続きです。21年も前なので、今はもう音信が途絶えている人もおられるし、今もなお頻繁に連絡を取っている人もおられます。人と人とのつきあいというのはおもしろいものですね。そのときは本当に真剣に濃いお付き合いをさせていただきました。

  脈々と流れる勢いあるもの
                   原広治 島根県立松江ろう学校教員(島根県)
 久里浜の国立特殊教育総合研究所に研修に行っていた通級指導教室の担当者が、そのときの講師と親しくなった。その講師がプライベートで来県されることになり、その情報を放っておくことのない島根の通級担当者は、無理を承知でお話を伺う機会をつくろうとした。快諾をいただいた。
 書籍や話でしか知らなかったその人が目の前にいた。大勢の人が集まった。会場となった小学校の教室で、講師の思いが炸裂した。参会者は深い坤きと納得の痺れを感じた。通級担当者は心動いた。そして、企画を練った。その講師が語った「親子合宿」が気にかかっていた。
 かつて松江では、「ことばの教室」担当者が中心となり、月2回の親子小合宿が精力的に行われていた。「よし、今度は俺たちがやろう!」担当者は奮い立った。島根スタタリング・フォーラムの出発である。
 以来、県内全域を対象とする年1回の吃音親子合宿がスタートした。今年で4回目を終えた今、事務局は次の合宿をイメージしていることだろう。継続することで、当てにし当てにされ、大きな力となる。継続することの面白さと大変さを、事務局は感じている。
 『スタタリング・ナウ』が100号を迎えた。私はその半分くらいしかおつき合いしていないが、どの号も脈々と流れる勢いある何かを感じ、届くのを心待ちにしている一人である。
 この『スタタリング・ナウ』を当てにし、読み終えた後の、一人で瞑想にふける時間を楽しんでいる。そんないい時間をいただいている。
 私たちの仲間が研修での縁から島根に招き、遠路遙々おいでくださる講師、人や絆を大切にし、いかに生きるかを根底から考えさせてくださるその講師こそ、伊藤伸二さんなのである。また会いたい。合宿にやってくるみんなにも、伊藤さんにも……。

【吃音親子合宿・島根スタタリングフォーラムは、伊藤が楽しみにしている年中行事。一緒に取り組む、島根県のことばの教室の担当者はいい仲間です】

  元気の素
                    鬼塚淳子 グラフィックデザイナー(福岡県)
 毎年のいろいろな活動やその報告を見ると、エネルギーに満ちあふれておられるのが、ばしばしと伝わってきて、いつも感動してしまいます。
 最近感じるのは、何でも続けることの難しさと大切さです。私は熱しやすく飽きっぽい性質なので、いろんなものに手を出しては醒めていくのですが、伊藤さんに出会ったエンカウンターグループも入口のひとつだった心理臨床の道と、本当にただ好きでやっている子どもの絵画教室だけは何とか続いています。
 私は続けることで精一杯で、こうできたらというビジョンはあっても行動に移すエネルギーはまだ足りなくて、温めているばかりで。頭で考えているより、やってみれば“ああよかった”って思えることはわかっているんですけどね。
 伊藤さんたちはそれを行動を持って示し、いろんな人の役に立ち、関心や興味を引き出し、巻き込んでいく。巻き込む人も、巻き込まれた人たちも、心地よく元気に楽しくやっていて、とてもいいバランスを感じます。
 これからも元気の素をたくさん放出し続けてください。私が何か少しでも役に立つことがあれば言ってください。ささやかながら力になれればと思います。

【年報や『どもり・親子の旅』の表紙を描いて下さった人。サマーキャンプの黄色い旗も鬼塚さんの絵です。初参加の人をやさしく温かく迎えてくれています】

  出版を通してのおつき合い
                    芳賀英明 芳賀書店代表取締役(東京都)
 毎号、伊藤さんのご活躍ぶりに、みなさん、勇気づけられていることと思います。伊藤伸二さんと私は、『新・吃音者宣言』なる書籍を1999年に出版して以来のお付き合いになります。『吃音と上手につきあうための吃音相談室』も同年に出版いたしました。また、2001年には筑波大学教授石隈利紀先生との共著『論理療法と吃音自分とうまくつき合う発想と実践』も出版させていただきました。『スタタリング・ナウ』でもご紹介いただきました。ありがとうございます。
 今後のさらなるご発展をお祈り申し上げます。

【芳賀さんとの出会いがなかったら、3冊の本の出版はなかったでしょう。ご自身が吃音で、出版の趣旨を十分理解して下さいました。感謝しております】

  根底に流れるものを共有しながら
          川井田祥子 應典院ディレクター すくーる・ほろん主宰(大阪府)
 1997年の秋、私は教育関係の方にお会いして話を伺い、次の方を紹介していただくという、「双六インタビュー」をしていました。不登校の子どもの親の会の方から伊藤さんを紹介され、突然インタビューをお願いしたところ快く了解して下さり、吃音のことに対してほとんど無知だった私に、伊藤さんはご自身の体験をふまえながら熱く語って下さったのです。
 以来、ニュースレターや年報を読ませていただくようになり、多くの驚きや発見、学びを得ています。なぜなら、吃音との向き合い方、他の吃音者への接し方など、発信されるメッセージの中に、教育を考える上での貴重なヒントやテーマがたくさん含まれているからです。私が教室で生徒と向き合うとき、應典院でいろんな立場の人と事業を進めていくときもヒントを得ることがたくさんあって、毎月欠かさず届くニュースレターを読むと、「私も!」と励まされます。また、原稿を書く方が大勢いらっしゃるので、根底に流れるものを共有しながら着実に会の活動は拡がり、全国(世界?)に根づいていることも実感します。

【知人の紹介で知り合った川井田さんが、平井雷太さんとの出会いのきっかけを作って下さり、今は、應典院でも共に活動しています。不思議な縁を思います】

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/01/26

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