親からみた子どものレジリエンス

 3月・4月は、卒業、入学、進学、就職と、様々な転機を迎える時期ですが、吃音親子サマーキャンプで出会った子どもたちの近況が届き、出会った頃の幼い顔を思い浮かべながら、なんとも誇らしい気持ちになっています。
 サマーキャンプに2回参加し、「吃音と共に生きる」を理解し、納得した子が、全国から62大学・大学院308名の学生がエントリーし、学生落語日本一をかけて熱い戦いを繰り広げる第23回全日本学生落語選手権『策伝大賞』の決勝戦まで残ったという話。どもる兄がサマーキャンプに参加するのに一緒に参加し続け、良き理解者となった妹が大学に入学が決まり、今年はスタッフとしてサマーキャンプに参加したいと言っているという話。小学2年生から連続でサマーキャンプに参加し、昨年卒業した子が、遠い地にある第一志望の国立大学に入学が決まったという話。結婚届の保証人を僕に依頼してきた子が、お母さんになったという話。
 ひとりひとりのエピソードが鮮やかに思い出されるとともに、この子たちの確かなレジリエンスを思います。
 今日は、「スタタリング・ナウ」2015.9.20 NO.253 より、まず巻頭言を紹介します。

  親からみた子どものレジリエンス
                      日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二

 2泊3日の吃音親子サマーキャンプには、3つの大きな柱がある。吃音についての話し合い、劇の稽古と上演、保護者の学習会だ。保護者は90分の話し合い、90分の作文教室、120分の話し合いで、吃音について向き合った後、4時間30分の学習会が組まれている。保護者の学習会は、毎年テーマは違うが、今年はレジリエンスについてみんなで考えた。
 まず、私がレジリエンスにっいて説明し、吃音については、「吃音を治す、改善する」方向が最近強くなってきているが、100年の吃音の歴史を説明し、「吃音とともに生きる」ことを考えることが現実的で、そのためには、子どものレジリエンスを育てることが大切だと話した。そして、7つのレジリエンスの構成要素に3つを加え、10項目について、私の体験を交えて説明した。
 その後、ひとりひとりに、自分の子どものレジリエンスについて、エピソードをもとにして、10項目にあてはまるものがあったら書いてもらった。第4回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のときに、合宿勉強会で制作したレジリエンスの表を参考に、それぞれの親が、自分の子どもについて振り返っていく。「子どもの良さ、強みについて考えてみよう」と漠然と言われても、なかなか思い浮かばないかもしれないが、10項目の説明書きをたよりに、子どもについて振り返ってみると、思い浮かぶようで、それぞれが書き始めた。だいたい書き終えたところで、話し合いの時のグループごとに集まり、書いたものを紹介しながら、1グループ1枚の模造紙に、子どものレジリエンスについて図解をしていった。
 その時の様子を千葉市立院内小学校のことばの教室の渡邉美穂さんはこう感想に書いている。
 ―伊藤伸二さんのレジリエンスの話の後、子どもたちのレジリエンスを日常生活から見つけるというワークをしました。講習会の時に高木浩明さんがまとめてくれた10項目の表をみながら、親が子どものレジリエンスを模造紙に図解したものを発表しました。「子どもをほめる」と教育界ではよく言われますが、そんな「ほめる」なんていうことばがうすっぺらく感じるグループの発表でした。「こんなエピソードがあり、それがレジリエンスのこの項目にあたります。さすが私の子どもです。尊敬します」とか。エピソードを交えての発表は、子どもが聞いたら、とても喜ぶだろうなあということばがたくさんありました。すごいワークだと思いました。―
 ひとつのグループに加わっていた、沖縄県の言語聴覚士の平良和さんはこう振り返る。
 ―親の学習会に参加しましたが、とてもいい話し合いでした。キャンプに参加する子どもたちもすごいけれど、この親にしてこの子ありという印象を受けました。お父さん、お母さんが子どものことを良く見ており、自分の子どもを誇りに思い、信頼していることが伝わってくる話し合いでした。これがまさに、「親と子」のキャンプなんだなあと実感しました。―

 グループごとに分かれた親たちが、模造紙にどう描こうかと楽しく作業をしている中で、ひとつのグループが勘違いをして図解していたために、追試になり、学習会の時間内で発表ができなかった。みんなが休憩している夜の時間に集まって、表を完成させていたので、最終日、子どもたちの劇上演前の、親のパフォーマンスの前にその発表をもってきた。グループのひとりひとりが、全員の前で、自分の子どものレジリエンスを発表する姿は、追試であったことが得をしたかのように、楽しく、誇らしげに見えた。キャンプが終わってからの感想文の中で、自分の子どもの前で、我が子のレジリエンスを話せたことの親の喜びと、それを聞いていた子どものうれしさが書かれていた。
 今回の学習会で、レジリエンスの10項目について学習した親は、子どもについて見る視点が広がったことになる。また、具体的に何を一緒に育てていったらいいかの展望もつかめただろう。具体的な子どものエピソードは聞いていて楽しい。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/03/23

Follow me!