スピーチがごちそうの、変な忘年会

 昨日は、大阪吃音教室の忘年会でした。実に4年ぶりの開催でした。
 コロナもインフルエンザもまだ少し心配な中、開催について、僕は慎重でした。コロナの前の最後の忘年会では、30名を超える参加者があったけれど、今年は何人が参加してくれるか予測ができません。貸し切りをお願いするにしても余りに人数が少ないと迷惑をかけることになります。長年忘年会の会場に提供してくださっている、僕の家の近くの、カフェ・グッデイズに人数が全くよめないのだけど、とお願いに行きました。大阪吃音教室の忘年会は、「飲み食べて騒ぐ」の普通の忘年会と違い「スピーチ」が一番のごちそうです。みんなしゃべること、しゃべること。普通は、人の話を聞かないで、飲み食いするところですが、僕たちの忘年会は、静かにひとり一人のスピーチ、つまりは人生に耳を傾けます。だから騒々しいところではだめで、また2時間の貸し切り程度ではだめなのです。長いときで4時間を超すこともありました。食事も満足でき、飲む方もたっぷり、そして4時間くらいかかるかもしれない。そのような会場はありません。それをすべて満足させてもらえるのが、学研都市線忍ヶ丘駅近くの「カフェ・グッデイズ」なのです。オーナーから「いいですよ、使ってください」と快諾を得て、大阪の運営委員をはじめ、会員に機関紙などを使って呼びかけました。
 そして、迎えた当日、急なキャンセルが3名ありましたが、29名が参加しました。前の忘年会以来という人もいれば、本当に久しぶりに会う人もいます。忘年会は初めて参加するという人もいます。普段の大阪吃音教室には、仕事の関係でなかなか参加できないけれど、万難を排して忘年会に参加した人もいます。それぞれに思うところがあったのだろうと思います。
 午後6時、いつものように、くじ引きで席を決め、会長の東野晃之さんのあいさつ、年長の徳田和史さんの乾杯の音頭で、忘年会がスタートしました。まずは、飲み、食べ、おなかを満たしました。みんなの楽しそうな顔を見ながら、僕は、ああ、コロナでできなかった、いつもの日常が本当に帰ってきたなあとしみじみと思いました。
 7時から、ひとりひとりのスピーチを始めました。席順をくじ引きで決めましたが、それがスピーチの順番でもあります。1番の前に、東野会長から、「忘年会に参加したかったが、どうしても、参加できない川東さんから、スピーチの原稿が送られてきた。前座として読んでほしいと書かれていたので、代読します」と話がありました。忘年会でのスピーチの原稿を郵送し、それを代読するなんて、聞いたことがありません。なんとも大阪吃音教室らしいなあと、川東さんのまじめな、誠実な、律儀な顔を思い浮かべました。初めて吃音教室に参加したときのこと、そこで出会った人とまだ交流が続いていること、吃音ショートコースで出会った小林悠太さんのことなど、几帳面な彼らしい文章が綴られていました。
 スピーチが終わると、質問したり、付け足したり、スピーチが苦手だという人には代わりに、その人になりきって話したり、ヤジや冷やかしが飛んで、自由で温かい時間が流れていきました。スピーチの途中で歌を歌った人もいます。詩吟も飛び出しました。詩吟は、その人が以前参加したときに詩吟を披露してくれたので、リクエストしたのですが、張りのあるすてきな声に、参加者一同、聞き入りました。
 午後6時から始まった忘年会が終わったのは、午後9時40分。「大阪吃音教室の忘年会は長い」のです。こんなわがままな忘年会を許してくれたグッデイズに感謝です。次回は、みんなのスピーチの内容について少し紹介します。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/12/24

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