大阪吃音教室 2026.3.6 新大学生・就活生・新社会人に向けて 第二弾

 新生活が始まる4月、その前の一番不安が高まるこの時期に、どもる人の新生活への不安やとまどいがどういうもので、どうしたら少しでも軽くなるよう、共に考えたいという企画の第二弾が、3月6日、行われました。今回は、4月から新社会人になる若者が参加していました。彼に何か届いたらいいなあと思いつつ、自分の経験の押しつけにならないよう、でも、自由に発言が続きました。
 担当者が予め考えてきた質問が黒板に書き出されました。今日、どうしても参加できない人は、前回の講座の後すぐに宿題として、これらの質問に答えて、書き送っていた人もいました。
 質問は、以下のとおりです。

◇当時のあなたが一番怖かったことは何ですか。
◇今のあなたから当時の自分に「大丈夫だよ」と声をかけるなら、どんな言葉を選びますか。
◇長年、吃音とつきあってきて気づいた「大切なこと」は何ですか。
◇吃音があったからこそ得られた「宝物(感性や出会い)」はありますか。
◇これから社会に出る若者に、これだけは伝えておきたい「知恵」は何ですか。
◇当時の自分は、自分の「吃音」をどんな存在だと思っていたか。
◇今、人生の山を越えてきたあなたはその「吃音」をどんな存在だと思っていますか。
◇あなたが人生で「どもりながらも逃げずに踏みとどまった瞬間」はいつですか。
◇「どもらずに話す」ことよりも人生においてずっと大切だったコミュニケーションの核心」は何だったと思いますか。
◇若者が「どもって謝っている」のを見かけたら、どんな許可を与えてあげたい?
◇あなたが生涯大切にしたい「吃音とともに生きるモットー」を若者に送ってください。

 参加していた人がそれぞれ自分の経験から、話していきます。ひとりひとりの人生が、コンパクトだけれども、語られ、それに耳を傾ける時間でした。ひとりひとりの、ひとつひとつの、経験には、共通するものもあり、みんな頷きながら聞いていました。

・一番怖かったのは、周りのみんなが先に就職が決まっていく中、自分だけが取り残されるような気がして、とても不安になったことがある。
・吃音があったからこそ、本と出会えた。本好きになれたのは、間違いなく、吃音のおかげだ。
・これから社会に出る若者には、いつも逃げててはだめだけと、ときには逃げてもいいんだよと伝えたい。その時間は決して無駄にはならず、自分の力を蓄えていることにつながるんだ。
・自分にとって吃音は、つっこみの下手な、気の利かない相棒のようだった。
・コミュニケーションの核心は、相手の目を見て話すこと。相手の目をみて話す習慣をみにつけて欲しい。
・今の、不安なとまどいの気持ちは持ち続けていい。持ちながら、新しい場に出ていこう。
・自分の吃音と向き合うことは、自分を研究する材料になる。

 4月から新社会人になる人に、印象に残ったことばを聞いてみると、「人生に最悪はない。不便なことはあっても」でした。論理療法をテーマにした吃音ショートコースの講師としてきてくださった石隈利紀さんが、ご自分の本にサインをしてくださったことばのようですが、実は、石隈さんの師匠のアルバート・エリスのことばでした。
 どんなことばが、そのときの自分に響くのか、分かりません。いつか、誰かの心に届くことを願って、(あるいは、届かなくても)心にある思いを、ことばにしていくことの大切さを思います。
 重苦しいのではない、でも、ずっしりと、それぞれのこれまでの経験の確かな重さをもったことばのやりとりが続いた、いい講座でした。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/03/15

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