第27回島根スタタリングフォーラム 2日目~吃音を話題するタイミングって?~

 2025年11月8・9日、島根県立少年自然の家で開催された第27回島根スタタリングフォーラムの様子を報告しています。明け方から雨が降り、子どもたちが楽しみにしていただろう浅利富士登山が中止になりました。事務局の森川さんによると、ここ10年で初めてとのことのようです。僕は、珍しく早起きをしたので、一緒に登ってもいいかなと思ったのですが、珍しいことを思ったので、雨だったのかもしれません。
 9時から、プログラムが始まりました。保護者との時間です。
 自身もどもるというお母さんが、自分の吃音を誰にも話してこなかったし、相談してこなかったし、家の中で話題になることもなかった。だから、子どもには相談したい人には相談できる子に育ってほしいと思っている。そのために、家の中で吃音を話題にできるようにしたいと言いました。ただ、どういうときに、どういう雰囲気で、どういう頻度で、話したらいいのだろうかと質問しました。大きくなったら話してくれなくなるかもしれないので、今のうちに土台を作りたいのだそうです。これに似た質問は、ことばの教室の担当者からもよく受けます。担当している子どもと吃音の話をしようと思うが、いつ、どんなタイミングでしたらいいのか、と。
 僕は、一番いいタイミングなんて、誰にもわからないと答えました。いつでもいいと思います。大事なのは、避けないことです。子どもに何かあったら、ちゃんと話すという心構えは持っておきたいものです。お母さんが、自分の感性に自信をもって、心が動いたときに話せばいいと思うのです。そして、九重のエンカウンターグループのファシリテーターを引き受けたときの話をしました。九州大学の村山正治さんがしているエンカウンターグループに参加者として参加した3回目のとき、村山さんから、「伊藤さん、ファシリテーターをしてもらえませんか?」と言われました。ファシリテーターの経験などないし、臨床心理の勉強を積んでいるわけでもないし、そんな僕にファシリテーターができるのだろうかと不安だったのですが、村山さんからは、「伊藤さんは、セルフヘルプグループの中でやってきたそのままの伊藤さんでいいのです」と言ってもらいました。それで僕は、自分の中から出たがっていることばを差し出そうと思って、引き受けました。つまり、今話さなければと、胸がドキドキしてきた時が僕の中からことばが出たがっているときです。「胸のドキドキ」のタイミングは、どもる僕ならではの尺度でしょう。言いたくても、どもるのが嫌で、しゃべるかどうか、常に自己内対話を続けてきました。そして、言わないことも多くて、後悔ばかりしてきました。どもることが平気になった今、この「ドキドキ」はとても役に立っています。人生を真剣に考えている人たちばかりの中で、安易にことばを重ねればいいということではないといつも戒めています。
 保護者や担当者が、子どもと対話するときも、自分の感性を大切に、正直に、出たがっていることばを差し出すというのがいいのではないかと思います。それしかできないと思うのです。
 もうひとつ、Y軸について、いろんな角度から考えました。ウェンデル・ジョンソンの言語関係図は、吃音の問題を考えるのに、大切なツールです。X軸への取り組みの限界は共通していると思いますが、Y軸とZ軸については、もう少し説明を試みてみたいと思います。(つづく)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/11/18

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