吃音親子サマーキャンプ 番外編 西山佳代子さんのこと

 吃音親子サマーキャンプが終わって2週間が経ちました。今、参加者から、スタッフから、参加しての感想が届き始めています。それらを読みながら、あのサマーキャンプの場が、ひとりひとりにとって、大切な、意味のある場になっていたんだなあと感じています。
 ことばの教室の担当で、退職して何年も経つのに、サマーキャンプの時期になると、そわそわして、わくわくして、楽しみになるという西山佳代子さん。西山さんは、うちの看板女優であり、芝居の衣装や小道具をも一手に引き受けてくれ、毎回、迫力ある演技で子どもに見本として見せ、芝居を盛り上げてくれます。事前の演劇のレッスンにはもちろん欠かさず参加しています。いろんなイメージが湧くようで、みんなで話していた以外に、当日はいろいろな小道具が次々に出てきます。それらを身につけ、みんなの演技に熱が入ります。芝居の衣装や小道具というと、もうひとり、神奈川の鈴木尚美さんがいます。事情があって、最近は参加できていないのですが、いつも気にかけてくれています。そして、鈴木さんが作った衣装や小道具を、毎回使っています。僕の家の押し入れの上は、芝居の衣装や小道具でいっぱいなのです。

 初日、所員の方から、荒神山自然の家が今年度で閉鎖になるかもというお話がありました。食堂閉鎖のことは聞いていましたが、まさか自然の家そのものが…という思いでした。それを聞いた西山さんは、やっぱり何かしなければと動きます。
 以下、西山さんからのメールより抜粋します。

 「荒神山ともこれで最後かと強く思うと、「これはやっぱりなんかせんといかん」と、諦めていた気持ちがむくむくと起こってきました。少しずつノートに下絵を描いていきました。実は、出発前の準備で、今回も最後の手品を仕込んでいこうと思っていたのですが、木を作るのに精一杯で、出発の朝に時間切れとなったのです。木は何もするはずではなかったのですが、毎日寝ているときに、”やっぱり木はいるぞ、作ったほうがいい”と囁く声が夢の中で聞こえたのです。大きいダンボールは貯めておいたから、何とかいける。前日にやり始めたけど、結構時間がかかる。手品の絵を描くまでこりゃ無理やなぁ、もしもやれるとしても、現地で描けるように新聞と絵を描く紙、マジッククレパスだけは一応持って行こうと用意しました。(中略)
 今回も鈴木さんの参加は実現出来なかったけれど、鈴木さんはしっかりと確かに参加していました。わらぐつを履き、甚平さんの衣装を着ることで、四郎とかん子にすっと気持ちが入っていくのを感じとれました。鈴木さんの細やかな物作りには、毎年改めてそのすごさを感じます。ぜひ鈴木さんの復活を期待しています。
「 はと」の部屋の4人が、最終日のできるかどうか分からない手品に、協力してくれました。ノートに、荒神山の生き物たちを下書きしていったものの、本番用のピンクの紙に大きく描いていくのに手間取っていると、兵庫県の畠山知子さんが「何してるんですか?」と声をかけてくれました。「実は、明日の卒業式の後にやりたいことの絵を描いているけど、間に合わないかも」と言うと、「手伝わせて」と言ってくれました。何と嬉しいことに、三重県の千種彩香さん、髙橋千恵子さん、大阪の溜彩美さんも声をかけてくれ、夜遅くまで付き合ってくれたのです。みんなの合作です。荒神山・琵琶湖・のはらうたの登場人物?たち・虹・太陽・風・雲・お二人、「帰りのバスに乗ったとき、いつまでも二人で手を振ってさよならをして送ってくれる姿が、ずっと心に残ってる」と言う畠山さんに、絵の中に入れてもらいました。出来上がって、みんなで写真も撮りました。なんか幸せな気持ちで最後の夜を過ごしました。‥‥
当日、卒業式が終わり、終了時刻の12時も過ぎ、バスのこともあるのでやっぱりあかんかなぁと思っていましたが、最後、伊藤さんが「いいよ、やってやって、どうぞどうぞ」と言ってくれ、嬉しかったです。ほんまに有難うございました。
来年、新しいところでのサマキャンを楽しみにしています。」

 最終日の最終プログラム。時間がなくなり、チャーターバスの出発時刻が気になる中、西山さんが登場しました。「荒神山がなくなるなんてね…」とぼやき漫才ではないけれど、楽しいおしゃべりをしながら、手は新聞紙をたたんだり、破いたり…、そして、びりびりに破ったはずの紙をパッと開くと、あれほど細かくびりびりになっていたはずの紙が破れていなくて、きれいなピンク色の上が丸々1枚あって、そこには、荒神山をバックに、琵琶湖、「荒神山ののはらうた」に登場したかまきり、いのしし、かぶとむし、かたつむり、かえる、きつね、たぬき、てんとうむし、くじら、いるか、めだか…みんな楽しそうに集まっています。手を振っている僕たちふたりもちゃんといました。夜なべ仕事で、この仕掛けを作ってくれていたと聞きました。同じ部屋の人も手伝ってくれてたのですね。こんなに大事に思ってくれているのかと、胸がいっぱいになりました。
 吃音親子サマーキャンプには、こんな名物スタッフが何人もいるのです。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/09/08

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