在日ミャンマー人―わたしたちの自由―

 2月7日、大阪・十三にある第七芸術劇場で、ドキュメンタリー映画「在日ミャンマー人―わたしたちの自由―」が公開初日を迎えました。土井敏邦監督の作品で、仲間の土井幸美さんからの連絡で、この日、監督が舞台あいさつをされるとも聞き、出かけました。
 土井監督は、「沈黙を破る」「福島は語る」「ガザからの報告」「異国に生きる―日本の中のビルマ人―」など、そこに暮らす人たちが語ることばを丹念に、丁寧に、拾い、そこに暮らす人たちの生き方を、僕たちに紹介してくれています。

 劇場公開に先立ち、2026年2月5日、NHKの「おはよう日本」に出演した、土井敏邦さんが、こんな話をしていました。

 「彼らの絶望感を伝えないといけないと思った。人間が人間らしく、尊厳を持って生きることが、どれほど尊いことかを、彼らは教えている。
 なぜパレスチナか、なぜミャンマーか、なぜ福島かと、よく言われるが、あの人たちと出会うことで、自分の生き方を問われる。俺は、こんな生き方でいいのか、と。
 伝え続けること、それが、私にとっての生きる意味。ドキュメンタリーは、鏡のようなもので、そこに登場する人たちを観て、自分が問われる。この映画を観て、何かを感じ取ってくれる人は必ずいる。作品という形にすることで、一人でも二人でも伝われば、万々歳だと思っている」

 2021年2月1日、ミャンマー国軍によるクーデターが起こり、ミンアンフライン総司令官が全権を掌握して、前年の選挙を無効とし、選挙に勝利した国民民主連盟のアウンサンスーチーさんたちを拘束しました。このできごとが起こったことはニュースなどでよく知っていましたが、その後のミャンマーの人たちのこと、日本にたくさんいるミャンマーの人たちのことを、僕たちはあまりにも知らなさすぎたと思います。

 ドキュメンタリーは、約3時間、ひとりひとりの語る時間が長いと、後の舞台あいさつで監督は言っていましたが、その長さをあまり感じないほど、彼らのことばには、伝えたい思いがあふれていました。その力強さに圧倒されながら、聞き入りました。

 監督は、あいさつの中で、このドキュメンタリーは、きっと観る人の心に届くと、自信を持っていると話されました。なぜなら、登場する人たちがすごいからだと。このドキュメンタリーを観て、自分の生き方を自問されるなら、このドキュメンタリーは価値があるのだとも。
映画が終わった後、客席から、大きな拍手が起こりました。そこに、僕は一筋の希望を見ました。

 まずは、観ること、そして知ること、そこから始めたいと思います。ぜひ、劇場に足を運んでください。できるだけたくさんの方が観てくださることで、応援できたらいいなと思います。

 土井監督の話や生きる姿勢には僕と共通することが多いとも感じました。「吃音を治さなければ、幸せな人生は送れない、だから私たちは治そうとするのだ。それをどもったままでいいなんて、よく無責任なことが言える」と、吃音親子サマーキャンプの実践を学会で発表した時、ある国立大学の教授から批判されたことがあります。吃音親子サマーキャンプに集まる子どもたち、大阪吃音教室に集まる人たちは、吃音が治らなくても、自分なりの豊かな人生を送っています。そんなどもる子どもたちやどもる人のことを、本当は映画にしたいのですが、それはできないので、映像の力には及ばないけれど、僕は、書籍で、文章で、講演で、伝えていきたい。僕にはそれを伝える責任と、使命があるのだと、土井監督と自分を重ねていました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/02/09

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