第34回吃音親子サマーキャンプ 最終日

 いよいよ、最終日。起床後のわずかな時間にも、子どもたちは、荒神山自然の家のシンボルともいえるクスノキのある小山の下で遊んでいます。岐阜県下呂市から参加した林さんが、子どもたちのために大きな風船を持ってきてくれました。林さんは、通級してくる子どもたちにキャンプを紹介してくれていて、毎年担当している子が参加しているのですが、今年は3組の親子が参加しました。大きな風船は、大人気。きれいな青空に風船が映えていました。
 最終日の朝のつどいで活躍してくれたシーツシスターズ。シーツを配布したり、最終日、シーツの片付けについて説明してくれたりする担当なのですが、いつの間にかシーツシスターズという名前がつき、みんなのアイドルのような存在になっていました。そのシーツシスターズも、今回がファイナルコンサートになりました。解散公演に向けて、前夜は、入念なリハーサルをしていたようです。

 最終日は、劇のリハーサルから始まりました。保護者も、子どもたちの劇の前座を務めるので、話し合いのグループごとに集まり、練習です。「荒神山ののはらうた」と題した親の表現活動は、実は、吃音親子サマーキャンプの隠れた名物プログラムなのです。工藤直子さんののはらうたから4つの詩を選び、振り付けをしたり、アレンジしたりします。今年、選んだのは、まず、いのししぶんたの「なんとかなる」でした。開催が危ぶまれた今年の吃音親子サマーキャンプが、スタッフ・参加者の協力で無事開催できたこと、それを象徴しているかのような詩です。そのほか、「ぼくがいるから大丈夫」というおまじないで自分を励ますみみずの詩、羽の色が黒くてもこれがぼくだと飛んでいくからすの詩、大地の役目はみんなを見守ること、それは親の役目と重なるという詩など、生きることを応援するメッセージ性のあるものを選びました。

 9時45分、学習室にみんなが集まりました。荒神山劇場の開演です。お父さんやお母さんの弾けたパフォーマンスを見た子どもたちは、その姿に勇気を得て、芝居に取り組みました。小道具、衣装を手作りしてくれた西山さんのおかげで、芝居が豊かになりました。どもりながらもせりふを言い切り、楽しくからだを使って表現し、声とことばに向き合った子どもたちの芝居でした。全てが終わり、会場は静かになりました。

 今年は、卒業生が5人います。1人は昨日終わっているので、あと4人の卒業式を行いました。それぞれが、自分の思いをみんなの前で語っていきます。連れてきてくれた保護者も話します。そんな姿を見守る参加者の温かいこと、やさしいこと。小さい子もいるのに、じっと卒業生の語りに耳を澄ませます。2019年、当時小6だった子どもたちが、「私たちが卒業するまで続けて」との約束を果たせたこと、自分でも驚きますが、ここまで元気で生きてきたことに感謝です。
 いつもなら、昼食を食べてから解散なのですが、今年は、ここで解散です。あわただしく荷物をもち、バスの待つこどもセンターへ移動しました。名残惜しそうに写真を撮っている人たち、メールアドレスやLINEの交換をしている人たち、ここでの2泊3日の出来事が、これからの日常生活に何らかの、勇気や支えやお守り代わりになってくれたら、こんなにうれしいことはありません。僕たちができるのはここまで、後は、ひとりひとりが自分の生活の中でサバイバルしていくしかないのです。応援しているよという旗は、常に立てています。何かあったら、いつでも連絡してください。

 荒神山自然の家での吃音親子サマーキャンプの開催は、今年限りとなりました。これまでいくつかの会場を使いましたが、1998年に初めて荒神山自然の家にお世話になり、その後ずっと荒神山自然の家で開催してきました。コロナ騒動で2年開催できませんでしたが、1998年から26年間、数々のドラマを生んだサマーキャンプの歴史にひとつの幕が下りました。
 歴代の所長さん、所員のみなさんには、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/09/02

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