私と『スタタリング・ナウ』3

 自分で編集したはずなのに、こんな人からもメッセージをいただいていたのかと驚いています。『スタタリング・ナウ』が僕たちの手を離れ、読者の皆さんのところでそれぞれに読まれ育っていること、ありがたく思います。昨日のつづき、「スタタリング・ナウ」 2002.12.21 NO.100より紹介します。

『スタタリング・ナウ』100号記念特集
   私と『スタタリング・ナウ』

  今を生きること
                      入部晧次郎 フリー編集者(東京都)
 初めて伊藤さんにお会いしたのは、もう30年近くも前になりますか。伊藤さんを中心とするグループワークの編訳書『人間とコミュニケーション―吃音者のために―』(1975年6月NHK出版)の編集者として、企画提案・編集を担当した機会でした。
 そして定年でNHK出版の現役を引退してからも伊藤さんとは、断続的な消息のやりとりをしていましたが、伊藤さんの近刊『論理療法と吃音~自分とうまくつき合う発想と実践~』(石隈利紀さんと共著、2001年6月芳賀書店)の本づくりのお手伝いをすることとなり、暫時ではありますが、再び濃いおつき合いの時期を得ました。
 「断続的な消息のやりとり」とそっけなく申しましたが、伊藤さんからの「消息」の内容は、当時の団体内において単なる見解の相違以上の激しい対立までも招来するという、お聞きするだに苦痛に満ちたものでした。吃音の生理について”白紙”の小生としては、論理的に伊藤さんを励ますでもなく、ただ一方的な聞き手としての立場しか執り得ませんでしたが、そのことにより、吃音の方々が世の偏見に耐えながらかくも苦悩の人生を送られていることの一つの証左でもあろうことだけは理解したつもりです。
 その後、伊藤さんとその周りの人々が、さまざまな障害を克服して「日本吃音臨床研究会」を設立、成長に尽くされ、その研鑽の成果のひとつとして前掲書の刊行に際し、小生にお手伝いするよう要請されることになりました。吃音に対してさまざまな努力をする中で、今を生きることを価値の第一に置くというこの本の主張には、確かな方向を志向しておられることを実感しながらの編集作業でした。
 改めて、伊藤さんはじめ会員の皆様の幸せと、会の一層のご発展をお祈り致します。

【また、出版でお世話になるとは思いませんでした。入部さんの丁寧な、緻密なお仕事で、『論理療法と吃音』はとても読みやすい本になりました】

  どもる子と吃音に関わる人への応援歌
                         青山新吾 石井小学校(岡山県)
 温かいコーヒー。ちょっと物悲しい光を放つストーブ。古ぼけた机と椅子…。ことばの教室は子どもや家族と過ごすところである。子どもさんがどもることを心配していらっしゃるご家族。わかっているのにことばがつっかえるのだと訴える子ども。友だちにマネされた…本読みがどもって終わらない…などなど。暮らしの中の吃音を話題にする子ども。
 思い切り体を動かそう、思い切り声を出そうと考え、子ども達と一緒に駆け回る。野球、サッカー何でもこい。紙芝居や音楽劇で笑いをとるのもおもしろい。
 でも…。
 僕に何ができるのだろう? 今のままで良いのかな? 悩みを感じて、考え込んでしまうことも度々だ。そのような僕に仲間がかけてくれる声。「よくやっているよね」「そのままの君で良いんじゃない」。
 自分を好きになれること。
 悩んでしまう自分を、無力さを感じる自分も、まあそれなりにちょっと良いかと思えること。これは、どもりのある子どもにも僕たちにもステキなことなのではなかろうか。悩みつつ、小さな喜びを大切にしながら進んでいきたいと思うのだ。
 どもる子どもたちと子どもたちを取り巻く多くの人への応援歌として『スタタリング・ナウ』の更なる発展をお祈りします。

【オラー読みなど、どもる子どもと一緒に創り出す実践が、子ども側に立ち切っていて、とても温かい。講習会に欠かせない実行委員のひとりです】

原点に戻る
                   深澤道子 早稲田大学文学部教授(東京都)
 100号に達したとのこと、本当にうれしく、心からお祝い申し上げます。
 「継続こそ力なり」という諺とおり。しかもただ続けるだけでなく、伊藤さんが扇の要になって、どんどんとすばらしい拡がりを見せ、おさえるべきところはしっかりとおさえて「原点に戻る」姿勢を持続なさっていることに敬意を表します。
 ますますのご活躍と、会員の皆様方のご発展を祈り上げます。

【アメリカから日本に帰ってこらた直後から、ずっと私の活動を見守って下さっているように私には感じられます。交流分析は私たちの学びの柱です】
(「スタタリング・ナウ」 2002.12.21 NO.100)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/01/18

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