吃音をテーマにした新作落語            天満天神繁昌亭で落語会~ハナサクラクゴ~

 旅から帰ると、2本の留守電が入っていました。「○日まで留守にしています」とメッセージを入れているので、留守電へのメッセージはそれほど多くはありません。そのうちの1本が、落語家の桂文福さんからでした。
 「ハナサクラクゴ」という落語会が大阪天神橋の天満天神繁昌亭であり、創作落語のひとつが、吃音をテーマにしたものなので、ぜひ、来てください、という内容でした。日にちは、13日の金曜日の夜席でした。金曜日は、大阪吃音教室があります。千葉の吃音親子キャンプがあったり、用事があったりして、ここ2回、吃音教室に参加できていないので、13日は絶対行こうと思っていました。うーん、少し迷いましたが、せっかく文福さんが知らせてくださった落語会、それも、文福さんがモデルではないけれども創作に関わった、吃音をテーマにした一席、落語の作家の方も参加するという落語会、ということで、吃音教室を休み、落語会に参加しました。
 当日券を購入するため、早く天満天神繁昌亭に着くと、主催が繁昌亭ではないので、開場時間の午後6時にならないと買えないとのことでした。せっかく早く来たのにと思い、企画会社に電話してみました。そのとき、電話対応してくださった人が、かなりどもっている人でした。どもってはいても、何の問題もなく、席は押さえておくので5時半頃に来てほしいとのことでした。吃音をテーマにした落語を聞こうと思ってきたら、どもる人が電話口に出てきた、何かおもしろいことになりそうな予感がしてきました。
 開場まで時間があるので、天満天神繁昌亭近くの喫茶店で、夕食をとろうと入りました。店の名前は「喫茶ケルン」、見覚えのある文福さんの絵が看板になっています。中に入ると、落語家さんや落語を聞きに来た芸人や著名人の色紙がずらりと並んでいます。写真もたくさん飾られていました。入り口近くの席に座り、人気のカレーを食べていると、ドアの向こうに、見たことのあるような人影が…。文福さんでした。
 今日は、文福さんの出番はないはずなのですが、来られたようです。私たちもびっくりしましたが、文福さんも驚いておられました。案内をしたけれども、日程が金曜日なので、大阪吃音教室があるから無理だろうなと思われていたようでした。「よう、来てくれました」と何度も言われました。一緒に来られた方に、「この人が、日本吃音臨床研究会の会長の伊藤伸二さんです」と紹介してくださいます。紹介された人たちも、多分、なんかよく分からないけれども、「そうですか」と親しげに挨拶してくださいました。不思議な世界に引き込まれているような気がしてきました。そして、開場前に、文福さんに案内されて、繁昌亭の楽屋に連れていってもらいました。初めて楽屋に入りました。きょろきょろしていると、その日の演者である、桂吉弥さん、笑福亭笑利さんと出会い、挨拶をしました。そして、吃音をテーマにした落語をする桂かい枝さんを文福さんが紹介してくれました。「ちょっと心配やったんです。うまくできるかどうか…」と言いながらも、僕たちが来たことをとても喜んでくださいました。そして、その落語の作家である石山悦子さんも紹介してもらえました。石山さんは、文福さんに取材をし、日本吃音臨床研究会のホームページも見て、今回の落語を作ってくださったそうです。
 落語が始まる前から、不思議な立ち上がりに、ワクワクしてきました。肝心の落語の内容は、また明日。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/10/14

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