吃音を学び、吃音を生きる子どもたち
2010年度 第39回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・長野大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.203(2011年7月23日)に掲載。 髙木 浩明(宇都宮市立雀宮中央小学校)
1 はじめに
これまで、ことばの教室で出会った吃る子どもたちは、自分と友だちの話し方が違うことに、通級開始前から既に気付いていた。「吃ることで特に困ってはいない」と言う子もいたが、じっくり話を聞いていくと、病気じゃないかと心配になったり、一人で治そうとしたり、あるいは気付いていることを含めてまわりの人に隠したりしていた。
自分や吃音と向き合うことの大切さ
2011年度 第40回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・北海道千歳大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.210(2012年2月20日)に掲載。 渡邉美穂(千葉市立あやめ台小学校ことばの教室)
はじめに
私は、千葉市の小学校でことばの教室の担当をしている。私がどもる子どもたちと取り組んできたことを、2011年度の全国難聴・言語障害児教育研究協議会全国大会北海道千歳大会で、発表させてもらうことになった。
これまで私は、どもる子どもたちとのかかわりの中で、あまり「学習する」という形を意識して考えていなかった。しかし、どもる子どもたちと行ってきたことを「学習」として整理し、まとめていけば、私たちが考えていることがもっと受け入れやすくなり、ことばの教室の担当者がどもる子どもと向き合うことの大事さを広く理解してもらえるのではないかと思った。
吃音と向き合い、つき合うことを目指して
~子どもとともに吃音について学び、考えることを通して~
2012年度 第41回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・神奈川大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.217(2012年9月20日)に掲載。 愛知県岩倉市立岩倉南小学校 ことばの教室 奥村 寿英
神奈川大会で発表するまで
山口大会で佐々木和子さん、長野大会で高木浩明さん、北海道大会で渡邉美穂さんが連続して全国大会で発表している。一緒に『親、教師、言語聴覚士が使える、吃音ワークブック~どもる子どもの生き抜く力が育つ~』(解放出版社)を作った仲間たちだ。次は私の番だと仲間から進められた。
自分らしく生きる力を育むために~吃音児グループ活動での取り組み~
2013年度 第42回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・鹿児島大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.235(2014年3月20日)に掲載。 静岡県静岡市立南部小学校通級指導教室 島田泰代
全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会鹿児島大会
2013年7月29日~31日、鹿児島市で第42回全国難聴・言語障害教育研究協議会が開催されました。大会記念講演は、ダウン症の娘のことばについて、岩元昭雄さん・綾さん親子による「わが子のことばの育ちを思う」「ことばが生まれるとき」のリレー講演と、「子どもと語る、肯定的物語-吃音を生きて、見えてきたこと-」の演題で、日本吃音臨床研究会会長の伊藤伸二が行いました。
講演の後は、「支えること、支えられること」の演題で、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の総括研究員・牧野泰美さんと伊藤伸二との対談。吃音分科会のコーディネーターも伊藤が行いました。
吃音分科会では、大分県日田市立日隈小学校の今井美保さん・中島好子さんの「吃音の指導から見えてきたもの~子どもたちと保護者に出会った6年間を通して~」、熊本県熊本市立出水小学校の境由香さんの「ぼく、本当はおしゃべり好きなんだ~子どもの思いを生活につなげるために~」、静岡県静岡市立南部小学校の島田泰代さん・望月純子さん・近藤奈緒美さんの「自分らしく生きる力を育むために~吃音児グループ活動での取り組み~」の3本の発表がありました。その中から、伊藤が当初からかかわっている静岡県親子わくわくキャンプの運営スタッフの島田泰代さんに発表の報告していただきます。
1 はじめに
ほとんどのお子さんが、「吃音を治したい」とことばの教室を訪れます。吃音の子どもの指導について、どうしたら良いのか手探りで迷いながらの毎日ですが、吃音の症状の軽減については、自分は全く無力であることを、多くの子どもたちとの出会いの中で思い知らされてきました。
それでも、私たちが今回の全難言協・鹿児島大会の吃音分科会の提案をしたのは、私たちの目の前にいる、吃音に向き合う素敵な子どもたちのことを多くの人に知ってほしいと思ったからです。 どもりながら、まったく気にする様子を見せず伸び伸びと生活し自己表現している子どもたちがいる一方で、吃音に関わる体験から悩みを抱え、ことばでの表現に消極的になり、ことばの教室を訪れる子どもたちがいます。私たちのことばの教室では、そんな子どもたちに「吃音にとらわれることなく、自分らしく生きる力をつけていってほしい」と願っています。
ことばの教室は、吃音の症状の改善には無力ですが、同じような体験や悩みをもつ仲間が出会い、どもっていても互いに伝えたいことは最後まで伝え合うという経験を通して、人と関わり合いながら自分を表現していく楽しさを味わうことのできる場であると思います。
私たちは吃音指導の教室の役割をこう考えています。
吃音について考え、表現する活動への取り組み~ナラティヴ・アプローチと当事者研究の視点から~
2014年度 第43回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・金沢大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.242(2014年10月20日)に掲載。 溝上茂樹(鹿児島県知名町立知名小学校 ことばの教室)
私は、鹿児島県の沖永良部島にある知名小学校でことばの教室の担当をしている。2014年度の全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会金沢大会で、どもる当事者でもある私が、子どもたちといっしょに取り組んできたことを発表した。
1 はじめに
大学を卒業し、一度は一般企業に就職したどもる私が、教員になり、さらにことばの教室の担当を目指そうとしていた当時、私自身は、どもりを完全に受け入れていたわけではなかった。どもりたくない思い、どもった後の否定的な感情も、なくなった訳ではなかった。
つながりのちから
~親子のつどいから見えること~
2015年度 第44回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・東京大会の吃音分科会で発表したものに加筆したものを「スタタリング・ナウ」NO.254(2015年10月24日)に掲載。 ことばの教室の先生方の研修会で発表!? ことばの教室から離れて久しい私が報告をお受けしていいのかどうか。が、どもる教員として、またどもる子どもと同行させてもらっている身として、その「ゆらぎの道程」を知っていただくのも何かのお役に立てるのかなとの思いでお引き受けし、この7月、東京で報告をさせていただいた。 神戸市立本山南小学校 そだちとこころの教室 桑田 省吾
<はじめに>
私の仕事は小学校の教員。そしてどもりだ。ことばの教室勤務になってから、仕事の上でどもる子どもたちと出会うようになった。その当時から私の中で繰り返されてきた「問い」は(自分のどもりへの理解や視点もままならないのに)「果たしてどもる子どもたちに支援がいるのか」「いるとしたらどんな支援か」、そして「どもりの私が望むようなどもる子どもの支援者に私が近づけるのか」ということであった。
どもる子どもたちとの活動を振り返って
【第45回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・島根大会】 島根県江津市立青陵中学校通級指導教室 教諭 森川和宜
2016年の7月、全難言島根大会が出雲市で開催され、私は、この大会の吃音分科会の提案発表をしました。当日は、コーディネーターとして伊藤伸二さんに分科会の進行・指導講評をしていただきました。 会場には、約90名の参加者(県内外を合わせ)があり、3つの提案発表後は参加された方からの質問や感想が途切れることなく続き、時間が過ぎるのがとてもはやく感じました。私自身このような大会での発表の経験はなく、自分の中では落ち着いていると感じていても体は正直で、マウスを握る手が震え、
吃音を生きるということ
~子どもたちのレジリエンス~
千葉市立花見川第三小学校 ことばの教室 黒田 明志
2016年7月28日に行われた第45回全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会全国大会島根大会の吃音分科会で発表した経験と実践を報告します。
はじめに 島根県出雲市で行われる全難言協の全国大会で、私が提案することになった。伊藤伸二さんをはじめ、信頼する仲間から薦められたことは大変光栄なことではあったが、それと同時に、何をどのように提案すればよいのか、その時の私には全く想像すらできなかった。「子どもたちのことを伝えたい」という漠然とした思いはあったものの
自分のことを語る場を作り、生きる力を育てる-子どもを支えるきこえの教室の学習のあり方-
千葉県千葉市立院内小学校 金井あかね
1.はじめに
一般的に、「難聴理解授業」と言われているものを、私のきこえの教室では、「自分のことを語る学習」と名づけ、耳のことを、クラスで話す場を作っています。基本的にはその子のペースに合わせますが、クラス替えがあるので、一年に一回は行います。その狙いはふたつあります。
対話で拓く吃音の世界~どもる子どもたちの「ことばの力」を信じて~
第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会 2019年8月3日 三重県教育文化会館 吃音講習会初日の午後、前日に行われた、全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会三重大会の、吃音と難聴の分科会で発表した2人の報告をしていただきました。紹介します。 神奈川県横浜市立東小学校 土井幸美
1.私の「自分づくり」を支えてくれた人たちとの出会い
「ふふふ、先生、それじゃ、いつまでたっても食べ終わりませんよ」
30年前、私の教員生活は肢体不自由児特別支援学校から始まりました。摂食指導の研修で学んだスキルを用いて、無言でマー君の口にスプーンを向ける私に、食事介助の伝達に来ていたお母さんが微笑みながらおっしゃった言葉です。マー君も「先生、おかしいよね~」と言っている感じの声を出して、お母さんと大笑いしていました。
どもる子どものレジリエンスを育てる対話
千葉市立検見川小学校 出口 紘子
1 はじめに 20年前、学級担任のサポートの立場の2年間の講師時代を経て、自分の学級をもてた私は、とにかくうれしくてしかたなかった。安心できる温かい教室の中で、子どもの一人一人がのびのびと自分の力を発揮できるクラスにしたいと考えたことをよく覚えている。失敗や困難はあったが、幸せで充実した教師生活だった。放課後は子どもたちとのお喋りに花を咲かせた。毎日、数人が代わる代わる教室に残り、クラス全員の前では話せない内容で盛り上がる。家族、友達、恋愛など、話は尽きなかった。集団の中では表れない思い、届かなかった声を受け取ることもできた。