大阪吃音教室 吃音Q&A 4

 一昨日のつづきです。これで最後です。大切なことがコンパクトにまとめられているなあと、自分でも思います。この、吃音Q&Aのコーナーは、ほかにもあります。日本吃音臨床研究会のホームページ、ぜひ、のぞいてください。
 いよいよ、第35回吃音親子サマーキャンプが近づいてきました。8月21~23日の日程で、今年の会場は、大阪府立少年自然の家。参加者は、南は、沖縄、鹿児島、長崎、山口、島根…、北は新潟、千葉、神奈川、東京、埼玉…から、ほぼ100名が集います。子どもたちの生きる力を育むためのキャンプ、35回目の夏を迎えます。
 では、「スタタリング・ナウ」2018.2.20 NO.282 より紹介します。

大阪吃音教室 吃音Q&A 4

◆第一声

藤岡 連発で、「わわわわわたし」と、音を繰り返していたら、相手には、何かしゃべろうとしていることは伝わりますが、第一声が出ないと、分かりません。この状態を、どもらない人はどもりだとは思わないし、わからないだろうと思います。

伊藤 第一声が出ないというのは、何かを言おうとしてことばがブロックして、難発の状態になっているということですね。

藤岡 はい、どもらない人にはなかなか理解しにくい現象かなと思うし、どもる人にとってもだからこそ余計に困ることが多いと思うんです。例えば、電話のとき最初の一声が出ないと、電話の向こうの人は無言電話かなと思ってしまう。何が起こっているのか分からない。電話でなくても、最初のことばが出ないと、この人どうしたのかなと思われる。何が起こっているのかわかりにくい。だから悩みが深くなると思います。第一声が出ないことについて考えたいです。

伊藤 藤岡さんは第一声が出ない時に、どういった工夫、どういう技を持っているのですか。

藤岡 今の私は、第一声が出ない時は、手を振るなどの、まず体が動くので何かを伝えようとしているのは相手もわかるんです。

伊藤 電話ではなくて、面と向かっている場合はですね。

藤岡 はい。でも、電話の時は、無言になってしまうと、緊張も高まるし、相手もどうしていいのか分からなくなる。

伊藤 相手が分からない時、どうしたらいいの?

藤岡 わからない時、それは大阪吃音教室で教えてもらったんですけど、何かを発する、とにかく何か発する。

伊藤 あ、この人どもっているんだなということを伝えるのですね。長谷川さんが教員採用試験の時、「どうぞ、名前と自己PRを言ってください」と言われた時に、名前が出ないで「…」となった。その時に、「私はどもります・・」と説明できて、その後の話が進んでいった。できることは、自分がどもっているということを相手に分かってもらうことですね。理解してくれるということではなくて「あ、この人は今どもって声が出ないんだな」ということを分かってもらうということですね。言いたいことの第一声が出なくても、違うことばなら出るなら、違うことばでも何でもいいから「音」を出すしかない。電話の場合は、電話口で「あ、あ、ああのあの」と言えば、「どもりながら電話しているんだな」とわかる。どもっている、ことばがこんな状態だと分かってもらうためには声を出すこと。どんな声でもいいから。
 そんなことができれば困らないと思うかもしれないけど。僕も、第一声がどうしても出ない時がある。寿司屋で「たまご」を注文しようと、一生懸命タイミングを見計らっても、「…」となり、出ない。何べん挑戦しても出ない時は出ない。病院で名前を言わないといけないときだったら、無理をしてでも「いい、いい、い伊藤」と言う。でも、寿司屋では、あきらめる。だからもう玉子は食べない。

藤岡 そこで伊藤さんは「たたたたたたたまご」と言わないんですね。

伊藤 言わないね。「たたたたた・」と言っても出ない気がする。「たたた、た、たたた、」と言い続けて「たまご」が言えずに終わったら、さすがの僕も惨めな気持ちになるだろうと想像します。僕は、逃げてもいいと思っているから。日常生活の中で逃げてる場面はいっぱいあります。でも、通信販売では絶対に名前を言わなきゃいけないし、病院で名前を確認されるとき、第一声が出ないからとやめるわけにはいかない。そのときは仕方がないから、「えー」「あのー」とつけたり「い~と~う~」と言ったり、あらゆる手を使ってでも言う。第一声が言えるようになる言語訓練があって、それが成功するならどもりは治ったと同じ。どんなに訓練をしても、「ゆっくり、そっと」といっても難しい。どうしても言わないといけない時は覚悟を決めて、「い~と~う」と言うしかない。寿司屋では「た~ま~ご~、く~だ~さ~い」と言うしかない。そこまで言って玉子を食べる必要がないから言わないけど。言いやすいことばをつけて勢いで言うとか工夫はできる。日本語は自由自在な言語だと思う。主語をつけてもいいし、つけなくてもいい。主語や述語、目的語、全部入れ替えても通じる。「私はあなたが好きだ」の「わ」が出なかったら「好きだ私はあなたが」でも通じる。他の言語だったらそうはいかない。いろんな工夫をして、とにかく言わなければならないんだったら出す。名前だったら仕方がないから「い~~~~~」というふうに言う。これしかないよね。ちょっとブロックの状態を我慢すれば言えるという人がいれば、何秒か間を耐える。やっぱりどもる覚悟しかないよね。だけど、どうでもいいことなら逃げてもいい。柔軟に考えた方がいいと思う。

◆感想

○どもることももちろんですが、内容が不安な面もあるので、自己紹介の3パターン用意しておいたらいいという話はすごくいい考えだと思いました。

○今までどもりながらでも用件は言え、用事はできていたのに、どもらずに言えることの両方を求め私は自分は欲張りだなと感じました。

○どもらないで自己紹介したら失敗だという話を聞いて力が抜けました。

○どもることに不安を感じて悩んでいた頃は常に、自分の中に、どもらない自分とどもる自分がいた。二つの自分を作るなんて本当はできないんですね。どもる自分が自分だというどもる覚悟、自分はどもりだと認めることで、ずいぶんと楽になった。

○自分が今まで思っていなかった、普段の生活を豊かにすることが事前練習だとか、どもっているのが自分の姿なんだとかなど、勉強になりました。今まで吃音を否定的に考えていたので、そういう意識を持てばプラス方向に考えられて楽になる。

○今度人前でしゃべらないといけない時、「どもるのが当たり前」「どもる覚悟」の境地に立ちたい。

○「どもってもいいやん」とどもる覚悟をしたけど、気持ちのどこかで恥ずかしいと思ってちょっと練習してみようかなと思うこともありで、悪あがきをしてもいいは新鮮でした。何もかも平気になるのは難しいけど、「恥ずかしい」と思うのもOKならできると思います。

○事前練習をしているのに、当日、なぜ練習通りにできないんだ、原因は何だろうと思っていた。事前練習の効果がないと聞いて、納得できました。何の目的で事前練習をするかということですが、私はずっと当日どもらないことを目的とした練習でした。そういう練習は間違っているなと思いました。自分が言わなければならない内容をどうやって言えばみなさんにわかりやすく伝えることができるか、その練習が大事だなと思いました。

伊藤 僕たちは、「自分のどもり」とばかり向き合ってきました。自分本位でした。そうではなくて、相手のことを考えるとずいぶん視点が変わって、相手にわかりやすいように、ちゃんと伝えようと思ったら、内容も声も工夫できる。もう少しゆっくり言うことはできる。どもらないでしゃべることは難しいけれど、ゆっくり言うことはできる。それは相手のためであって、自分のためじゃない。相手のために、ということなると、決心が変わってくると思います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/08/19

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