大阪吃音教室 吃音Q&A 2
続きです。吃音を考える上で、そしてどもる人にとって、大切なキーワードで、話は進んでいきます。《不安への対処》につづき、今日は、《緊張》です。
「スタタリング・ナウ」2018.2.20 NO.282 より紹介します。
◆緊張
藤岡 緊張とのつき合い方について聞きたいです。
私は緊張しやすいんですけど、昔、どもりで悩んでいた頃は緊張しすぎて頭が真っ白になったり、しゃべる前からそうなってしまったり、しゃべってる最中も何をしゃべっているのか分からなくなっていた気がします。今は吃音には悩まなくなりましたが、緊張のスイッチは入りやすいです。
伊藤 緊張のスイッチね。当事者研究風にしてみましょう。どんな時、どんな場面で緊張のスイッチが入るのか、それを書いてみる。日常生活においていつでもどこでも常に緊張しやすいなんてことはありえないでしょう? お風呂に入っている時に緊張しているわけではないですよね。どういう場面で緊張するのか、自分で知っておく必要があると思います。よく「私、緊張します」と言けれど、「どういう場面なの?」と聞いたら、具体的にはあまり出てこないことがあります。藤岡さんが緊張する場面はどういう場面ですか?
藤岡 今思いつくのは、大阪吃音教室の講座で自分がちゃんと準備して、ある程度自信がある時はそんなに緊張しない気がするんですが、ちょっと自信がない時は、始まる前から緊張しています。
伊藤 となると、その緊張をなくそうとすると、毎回毎回完壁な準備をしないといけなくなる。それは、しんどいよね。ちゃんとした講座をして、みんなにとっていい展開をしたい、ある意味、他者により良いものを提供したいと思って緊張するということですかね。
歌手の越路吹雪さんは、何干回もコンサートでステージに出て、いろんな場面を経験しているにもかかわらず、舞台では、いつでも緊張すると言っていました。それは亡くなるまで続いたみたいです。緊張を和らげるためにお酒を飲んでみたりするが、結局は緊張してしまう。どうして緊張するのかと考えてみたら、高いお金を出してコンサートに来てくれている観客に対して、自分のベストな歌を提供できるかどうかということの不安だった。緊張をなくすのは難しいけれど、緊張する場面で、緊張する自分をなんとか支えて、演技したり、歌ったりする。それがプロだと言っています。竹内敏晴さんも舞台で俳優が緊張しないで演じられたらいいと言うけれど、それは難しいと言っていました。緊張を完全になくすことはできないけれど、頭が真っ白になるような極度の緊張ではなくて、まあまあの程度の緊張に抑えるために、人はそれぞれ何かグッズを持っていたそうです。たとえば、舞台の袖に、お地蔵さんとかクッションとかを置いておいて、舞台に出る直前にその頭をなでるとか、お守り代わりの小さいものを持って出るとか、子どもが愛用の枕やぬいぐるみを抱いて寝るような感じの安心できるようなものを持っておくくらいしかないですね。緊張していい、人前で話をする場面で緊張するのは当たり前です。舞台に出ることは、友達同士で雑談をしているのではないので、緊張しないほうが失礼だと僕は思います。僕は、テレビはほとんど見ないし、特にバラエティ番組は大嫌いですが、友達同士が普段の雑談をしているようなものをそのまま放送の電波で流すのは、とても失礼な話だと思います。
緊張はしてもいいし、するのは当たり前。緊張によって自分の力を100%出せなくても70から80%くらいは発揮できる、そういうふうに考えたらいい。僕たちは、オリンピックの選手じゃないんだから。緊張は緊張で置いておいて、それをなくそうとしない。多少緊張が解く方法としては、竹内さんが言ってたのは、緊張しきる前に、「ああ、今、自分は緊張しているな」と気づいて、「は~~~~」息を吐くことで、肩の力を抜く程度しかないと言っていた。舞台俳優にとっても緊張を解くのは重要なテーマだけれど、プロにもなかなかできない。そう考えると、できることは緊張する場面に恐れないでできるだけ出ていって、できるだけ失敗をする。その失敗の数だけ過度な緊張がなくなる。その方法しかないと思います。場数を踏むことと、緊張はあって当たり前と思うこと、そして緊張の場面を自分でリストアップしてどうしてこの場面で緊張するか考える。原因が分かれば、多少、その原因に対してアプローチができるかもしれない。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2026/08/15

