第7回ちば吃音親子キャンプ 2日目

 2日目、気持ちのいい朝を迎えました。自然の家の前の広場に集まって、朝のつどいです。ちばキャンプの旗をあげ、ラジオ体操をしました。
 最初のプログラムは、作文教室です。僕たちは、話すことはもちろんですが、書くことを大切にしてきました。34回目になる吃音親子サマーキャンプでも、2日目の朝の定番プログラムです。どもる子どもたち、保護者、きょうだい、スタッフの子ども、それぞれの立場で、吃音にまつわるエピソードを思い出し、作文を書きました。全員が静かに机に向かうため、話し合いのときのように動き回ることができません。ひとり自分のどもりと向き合う時間です。どもる子どもが自分の吃音と向き合い、吃音を認めて歩み始めるには、まず、辛かったこと、苦しかったこと、そしてそれを自分がどう感じているかを表現することが不可欠です。吃音について書ければ、吃音について話し合うきっかけにもなります。本人がよければ、他の人に読んでもらうこともできます。その子どもの吃音への思いを知ってもらうことができるのです。自分を表現することなしに、自分をみつめることはできません。
 みんなが作文を書いているこの時間、今年初めてスタッフとして参加した人や、ことばの教室の実践について、僕に質問のある教員が参加して、スタッフ研修のようなことをしました。質問が出されると、どうしてこのような質問をしたのかと、質問者との対話が始まります。僕は、10人以内の少人数で話し合うことが一番好きです。どもることを否定しないで、子どもとともに悩み、考え、歩いてくれる担当者であってほしいなと願っています。
 作文の後は、2回目の保護者との話し合いでした。前日できなかった質問をしてもらいました。
 来年4月から中学校に行くという子の母親が、自己紹介のとき、カミングアウトした方がいいのかどうかと質問しました。僕の答えは、「どっちでもいい」です。本人がしたいと思えばすればいいし、したくないならしなくていい。公表するのがいいように思われているけれど、僕は一概にそうは思いません。本人が伝えたいと思う人に、伝えたいと思ったタイミングで伝えればいいと思います。そのための準備はしておくといいです。吃音について簡単に説明する文章を作っておく、いざというときに、それを出して説明するということです。社会的に理解を、ということが叫ばれていますが、大事なのは、目の前の、これからもつきあいのある人に、自分のことばで語ることだと思います。また、周りの環境がたとえ悪くても、理解されなくても、自分は自分だ、と生きる力を身につけることが大事だと僕は考えています。
 その後、非認知能力について説明しました。子どもたちも、非認知能力について学んでいます。保護者にも、非認知能力について知っておいてもらいたくて、まず僕の非認知能力について話しました。イメージが広がったところで、セルフチェックリストを使って、自分の非認知能力についてチェックしてもらいました。そして、その中で、一番特徴的なものをひとつを選んで、なぜそれを選んだのか、エピソードを話してもらいました。
 ひとりひとり発表してもらったのですが、発表しながら、うれしそうに話す姿が印象的でした。新しい仕事にチャレンジしているので冒険心があるとか、赤信号では必ず止まるから道徳性があるとか、病気や失恋などしんどいことがあったけれども、レジリエンスで乗り切ってきたとか、共感性があるから恋愛物のドラマが好きだとか、うなずいたり、笑ったりしながら、ひとりひとりの話を聞きました。家に帰ってから、それぞれ別々に学んだ非認知能力について、家庭の中で話題になったらいいなあと思いました。
 午後は、ふりかえりです。大きな部屋にみんなで輪になりました。最終的に残っていたのは、42人。ゆっくり、2日間をふりかえりました。

・悩んでいたことを質問できてよかった。
・子どもだけでなく、親も交流できてよかった。
・質問して分かるという瞬間を体験できた。対話を経験できてよかった。
・若返った。子どもに戻ったように楽しかった。
・去年は初参加で緊張していたけれど、今年はリラックスできた。
・仲間がいて、自分だけじゃないとわかり、吃音があってもいいんじゃないと思えた。
・子どもが、大勢の前で質問する姿に感動した。
・伊藤さんと初めて会った。人として大切なこと、生きていく上で大切なことを聞いた。
・問われなければ考えない。問うのが、ことばの教室の仕事なんだと思った。

 7回を積み重ねてきたちばキャンプ。初参加の人もリピーターの人も混じり合って、いい味を出しているなあと思いました。ちばキャンプの文化が育ってきているということでしょう。
 来年の日程も決まりました。また、来年、第8回ちばキャンプでお会いしましょう。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/10/09

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