吃音親子サマーキャンプ 番外編 兵頭潔さんのこと
昨日の演劇活動で頑張ってくれる西山さんにつづいて、ぜひ、紹介したいスタッフがいます。兵頭潔さんです。
消防士になりたいという夢を持ち、厳しい消防学校時代を耐え、そして夢を叶え、今、消防士として活躍している雅貴君。
僕は、就職と吃音について話をするとき、いつも彼の顔が浮かびます。どもるから、話すことの少ない仕事に就いた方がいい、どもるから電話応対のない仕事を探すとか、そう考える人がいます。もちろん、本人がそれでよければいいのですが、いや、仕事は本当に自分がしたいと思うことを選ぶのが一番だと、僕はいつも思います。その話のときに、雅貴君が消防士の仕事を選んだ実際のエピソードを話すのです。
雅貴君から「消防士になりたいが、どもる僕になれるだろうか」と僕に相談がありました。僕は、「どんな仕事を選んでも、話すことはついてくる。確かにどもっていて、しんどいこともあるだろう。でも、自分がしたいと思い、なりたいと思う仕事なら、耐えることができる。自分のしたい仕事に就くためにがんばろう」と話しました。そして、消防士を目指した彼ですが、僕が想像していた以上に、消防学校時代は厳しかったようです。「そんなにどもっていて、市民の命を守ることができるのか」と言われたこともあったようですが、彼には、体力もあったし、粘り強さもあったし、人柄の良さもあったし、何より消防士になりたいという目標に向かって努力を続けることができる力がありました。そして、今、消防士として活躍しているのです。
その雅貴君のお父さんが、兵頭潔さんです。兵頭さんは、吃音親子サマーキャンプになくてはならない存在です。雅貴さんは、仕事が忙しくサマーキャンプに参加することはできませんが、その代わりに潔さんがサマキャン卒業生の親として参加しています。そして、サマーキャンプ期間中の麦茶作りや補充、ゴミの処理、忘れ物や落とし物の処理、部屋の点検など、細かい仕事を一手に引き受けてくれています。特に今年は、食堂が使えなかったので、毎回、食事のたびに出たゴミを自分たちで処理しなければなりませんでした。滋賀県は、ゴミの分別が厳しく、その仕分けも大変でした。次のプログラムが始まると、みんなはそちらの方に向かいます。最後は兵頭さんがきちんと処理してくれていました。荒神山自然の家の所員の方にも、兵頭さんの仕事振りは一目おかれているようでした。帰るとき、「兵頭さんには、こちらがありがとうございますを言いたいです。本当に丁寧に細やかに仕事してくださいました」とお礼を言われました。最終日の部屋の点検も、僕たちがすべきところ、兵頭さんにお任せしています。
兵頭さんの他にも、サマキャン卒業生の親として、高校の教師の坂本英樹さんが参加しています。スタッフのほとんどは、どもる人、どもる子どもを担当することばの教室の担当者や言語聴覚士ですが、もともと吃音とは全く関係のなかった人がスタッフとして何年もかかわってくれています。吃音親子サマーキャンプには、こんな名物スタッフが何人もいるのです。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/09/09


