島根県難聴言語障害教育研究会春季研修会

 今年の「吃音の夏」のスタートは、島根県難聴言語障害教育研究会の春季研修会。6月12日に島根入りをし、翌13日、会場の松江合同庁舎に送ってもらいました。
 午前は、「どもる子どもや、どもる子どもにかかわる親・教師が知っておきたい吃音基礎知識」、午後は、「どもる子どもが幸せに生きるために、ことばの教室でできること」の演題で各2時間、話をしました。参加者は島根県の通級指導教室担当者90名とのことでした。島根とは深く、長いつきあいがあり、島根スタタリングフォーラムには毎年参加していますが、フォーラムに参加したことがない担当者も少なくありません。研修会での講師は久しぶりなので、僕の話を聞くのが初めてという人が7割くらいいました。
 僕は、これまで自分が「体験」したことを「振り返り」、他のどもる人の体験や、精神医学や臨床心理学、社会学などから学んだことを「参照」して整理して「納得」してきたことだけを頼りに発言してきました。僕の主張は少数派だけれど、体験に基づいた確かな道だと信じています。それを知ってもらうためには、やはり、僕自身のこれまでの歴史を語らないといけません。3期にわかれる僕の人生を、そのときどきのエピソードを交えて話しました。小2の学芸会の話、中2のとき言語訓練をしていた僕にかけられた母親のことば、卓球部を辞めた高1の話、吃音治療を受けた東京正生学院の話、そしてそこで出会った初恋の人の話…これまで何百回語ってきたことでしょう。でも、これが、ここが、僕の原点なのです。
 経験の浅い担当者が少なくないということを聞いていたので、言語関係図や吃音氷山説について説明し、吃音は症状だけの問題ではないこと、症状をなんとかするための訓練は意味がないこと、吃音は自然に変わっていくことを強調しました。大切なのは、子どもや保護者に、吃音に対する否定的な概念を植え付けないことです。
 たくさん用意したパワーポイントのスライドでしたが、全てを紹介する時間はありません。ポイントになることだけを紹介して、あっという間に午前の部が終わりました。
 午後のスタートは、アンパンマンのマーチの歌からスタートしました。アンパンマンガールズ&ボーイズが結成され、会場の前に並び、賑やかにスタートしました。
 ことばの教室でできることは、子どもたちの「非認知能力」を育てることです。「非認知能力」について話すのにぴったりのアンパンマンに登場してもらったのです。午後は、スライドをやめて、質問に答えることから始めました。たくさんの質問全てに答えました。その後は、健康生成論、非認知能力について紹介しました。最後に、NHKのクローズアップ現代で放送していた「感情リテラシー」について触れました。闇バイトや特殊詐欺に加担させられる若者が自分の感情がつかめず、感情表現することばを知らないために、何でも「ヤバイ」「エグイ」で表現するのだそうです。ことばに悩んできた僕たちは、ことばを大切にしたいと、よく言ってきましたが、子どもたちのことばの力を育てたいものです。「ヤバイ」の一言で済ますことなく、気持ちにふさわしいことばをみつけ、相手に伝えていきたいです。午後の2時間もあっという間でした。
 夜は、懇親会。20人くらいが参加してくれたようです。久しぶりに会う人もいて、みんなも盛り上がっていました。わいわいとにぎやかなみんなを見ながら、こうして「チーム島根」の力が育ってきたのだなあと思いました。
 翌日は、保育勉強会主催の講演会です。どんな人が参加するのか、何人くらい参加するのか、主催者も全く読めない講演会。楽しみです。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/06/19

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