「学習・どもりカルタ」制作にかかわって 3

 「学習・どもりカルタ」制作にかかわった人たちの、「学習・どもりカルタ」に寄せる思いを紹介しています。最後は、絵札の絵を描いてくれた渡辺紀美枝さんです。渡辺さんは、僕が講師として初回からずっと参加している島根スタタリングフォーラムに、どもる息子と一緒に参加しました。そのとき、僕は渡辺さんと出会いました。10年続けて参加した渡辺さんに、「学習・どもりカルタ」の絵札の絵を描いてほしいとお願いしました。絵札の絵の中に、渡辺さんの息子に似た男の子が登場します。どもる息子とともに歩いてきた母親の愛情あふれる絵札は、「学習・どもりカルタ」の重要な役割、位置をしめています。子どもたちは、この絵札を見て、自分の経験と照らし合わせ、ほかの人の経験を想像しているのだと思います。
 「スタタリング・ナウ」2010.9.26 NO.193 から紹介します。
 なお、「学習・どもりカルタ」(解説書付き)をご希望の方は、下記のいずれかの方法でお申し込みください。
①郵便局に備え付けの郵便振替用紙をご利用いただき、1,500円をご送金ください。
  加入者名  日本吃音臨床研究会
  口座番号  00970-1-314142
②切手1,500円分を同封して、下記までお申し込みください。
  〒572-0850 寝屋川市打上高塚町1-2-1526 日本吃音臨床研究会
③ゆうちょ銀行の下記口座に、1,500円をご送金ください。
  銀行名:ゆうちょ銀行  金融機関コード:9900  店番:099
  店名(カナ):099(ゼロキュウキュウ店)  預金種目:当座
  口座番号:0314142  カナ氏名:ニホンキツオンリンショウケンキュウカイ

  絵札を描き終えて、どもる息子に感謝
                           島根県浜田市 渡辺紀美枝

 現在中学3生生の息子の吃音(どもり)で通級教室に通い始めたのは、保育園の年中のときでした。それまでは、なんとなくしゃべり方がおかしいなあ?とは思っていたものの、あまり気にしてはいませんでした。
 それから、当時担当の先生だった松原洋司先生からお誘いを受け、吃音親子キャンプ「島根県スタタリングフォーラム」に初参加したのが保育園年長の時です。それから毎年続けて参加して10年になります。
 フォーラムに毎年講師として参加しておられる、日本吃音臨床研究会の伊藤伸二さん、スタッフの通級の先生方、参加される子どもたち、親さんと出会い、毎年貴重な体験、経験ができました。
 いろいろなたくさんの人と人のつながりが持てるというのは、ある意味この現代社会ではとても恵まれているのかもしれません。このつながりがもてるきっかけになった息子に感謝です。これはきっと将来、息子にとっても、私にとっても素晴らしい『宝物』になると思います。
 このつながりの中から、今回、伊藤さんから『学習・どもりカルタ』を作るから絵を描いてほしいと依頼がありました。
 以前、フォーラムの親さんの話し合いの中で、私が息子の話した言葉を書き留めたものを題材に描いた絵本をお見せしたのを覚えて下さっていたのです。そして、今回、どもる子どもの親である私に、みんなで作ったどもりカルタの読み札に合わせて、絵を描いてほしいと言われました。
 私には大役すぎると思いながらも引き受けました。送られてきた読み札を読むと、どもりに対しての悔しさや前向きさなど一句一句に込められた想いが伝わってきます。
 みんなの想いのつまった読み札に合わせて絵を描き始めてすぐにつまずきました。「どもり」や感情表現など抽象的な表現の読み札のイメージと絵が食い違わずに描けるかということです。
 壁にぶつかり戸惑う私に、カルタ制作担当の、千葉の渡邉美穂さん、栃木の高木浩明さん、伊藤伸二さん、大阪のどもる人のセルフヘルプグループ、大阪スタタリングプロジェクトの藤岡千恵さんたちが、絵を描くとき、イメージがふくらむように、子どもやどもる人が、どんな想いでこの読み札を書いたか知らせて下さいました。とても参考になり助かりました。
 カルタの絵札を描くなど、人に見せるために絵を描く経験のない私が最後まで仕上げられたのは、このカルタを完成させるために関わる人たちの力強いパワーと想いが後押しして下さったからです。
 1か月あるかないかの短い時間の中で、仕事の都合でなかなか思うように進まず「どうしよう?」と思いつつの作業でした。経験不足の私の絵で良いのかと不安がありましたが、「大丈夫、とてもいいよ」の励ましに支えられ、なんとか仕上がりました。振り返ると、とても貴重な体験をさせていただいたことに感謝しています。
 この『学習・どもりカルタ』を通して、「どもり」の想いや気持ち(悔しさ、前向きさ)が伝わりますように。そして、『カルタ』を通してたくさんの出会い、つながりが広がっていきますように。
 この『カルタ』制作に関わらせていただいたことに感謝します。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/04/07

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