『どもる君へ いま伝えたいこと』(解放出版社)が、新聞などで取り上げられ、紹介されました。

 『どもる君へ いま伝えたいこと』(解放出版社)が、いろいろな新聞に取り上げられました。その一部を紹介します。まず、大阪日日新聞。それまで全くつながりのなかった新聞社です。何がきっかけで紹介してくださることになったのか、全く思い出せません。もうひとつ、産経新聞の記事も紹介します。(「スタタリング・ナウ」2009.4.26 NO.176)

どもりと向き合えば変わる
「事実認め歩き始めて」
寝屋川の伊藤さん “体験の結晶”本に

 「わたし」と言いたいのに「わわわわたし」となったり、「・・・わ」と声が出ない。そんなどもりと一生をかけて向き合ってきた伊藤伸二さん(64歳)=寝屋川市打上高塚町=が当事者たちの悩みに答える「どもる君へいま伝えたいこと」を出版した。読み手に語りかける文体で「どもる事実を認めて歩き始めると君の『変わる力』が強く働き始める」とメッセージを送っている。

 伊藤さんは3歳ごろからどもりはじめ、小学2年の学芸会でせりふのある役から外されたのを機に悩みだす。どもりを否定的に考えて音読や発表ができなくなり、友だちとも距離を置くように。「将来への夢も希望ももてなかった」。
 どもりは20世紀初頭から、原因の調査や研究が盛んに行われるようになったが、いまだに未解明。100人に1人の割合で、2、3歳からどもりはじめるケースが多いが、中高生や社会人でもなる。
 伊藤さんの人生の転機は21歳の夏、「どもりは必ず治る」と宣伝する学校に行ったこと。同じように悩む300人と4ヶ月間訓練してもみんな一様に変化がなく「どもりは治らないと事実を認めることができた」。
 どもりと向き合い、「ともに生きよう」と決めてからは積極的に活動。吃音者の会や研究会などをつくって世界大会を開催、国際組織も設立した。どもっても相手に分かるように丁寧に話すことを心掛け、「気がつけば生活に支障はなくなっていた」という。伊藤さんは「変わった」。
 「どもる君へ」では、40年以上にわたる“体験の結晶”を一問一答形式で凝縮。小学5年から中学生向けに、同級生とのつきあい方や、どんな仕事に就けるかなど22の設問に答える。吃音者でもアナウンサーや教諭として活躍している人を紹介。当事者に自信をもつよう促す。
 伊藤さんは「どもりながら、したいこと、しなければならないことをやっていこう。自分の人生を大切にして少し努力すれば誰にでもできる」と呼びかけている。
A5版。96ページ。1,260円。(豊野宙磨)
2008年(平成20年)8月27日 水曜日 大阪日日新聞

仲間と出会い 逃げずに話して
日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二さん
「どもっても大丈夫と伝えたい」

 ”どもる自分”と40年以上にわたって向き合ってきた日本吃音臨床研究会会長で、大阪教育大学非常勤講師の伊藤伸二さんがこのほど、小中学生とその親や教師に向けた『どもる君へ いま伝えたいこと』を出版した。治そうと思うあまり、豊かであるべき子供時代を見失っていった自身の体験をもとに、Q&A形式で「治らなくても、大丈夫」というメッセージを熱くつづる。
(服部素子)

 伊藤さんは、昭和19年生まれ。小学1年生までは、どもっても気にしない明るく元気な子供だった。しかし2年生の秋の学芸会で「セリフのある役はかわいそう」という担任教師の”配慮”により、クラスで一番成績のいい自分がやるものと自他ともに認めていた主役を外される。その日から、強い劣等感が生まれ、友人に話しかけることもできなくなったという。
 そんな伊藤さんに転機が訪れたのは21歳のとき。東京の言語訓練学校で、300人の吃音仲間と出会い、吃音は自分だけではないことを知ってホッとする半面、治そうと努力すればするほど、治らないという確信を抱くようになる。すると伊藤さんの心の中で、不安を持ちながらも、話すことから逃げないで、自分の言いたいことは話そうという気持ちが生まれた。
 伊藤さんのそんな自己紹介から始まる本書の特徴は、吃音は治らないというスタンスに立ちながらも、逃げないで話すことで”どもる自分”が自然に変わっていくことを具体的に伝えている点。
 なかでも象徴的なQ&Aが、治す方法にはどんなものがあるのかという質問に対する「原因がわかっていないから、誰もが治る薬や手術などの治療法はない」という答え。
 なめらかに話すことに価値をおくより、自分の内面の豊かさに目を向けてほしいと、続く。
 そのための第一歩として、伊藤さんがすすめるのは、仲間と出会うこと。本書には、仲間づくりの場として伊藤さんが19年間続けている「吃音親子サマーキャンプ」で子供たちから出た質問も取り上げられている。
 ちなみに、同キャンプは2泊3日で、参加した幼稚園児から高校3年生までの子供とその親、スタッフら「どもる君へいま伝えたいこと」の著者、伊藤伸二さん約140人全員が90分かけて作文を書き、その作文をもとに90分の話し合いを3回行い、さらに3日間かけて劇を作りあげて上演する。その体験を通して、子供も親も、自分は1人ではないことを知り「自分は自分のままでいい。どもる自分も価値ある人間だ」ということに気づいていくそうだ。
 この本を伊藤さんが書いたのは”治る情報”が氾濫することへの危機感からだという。
 「臨床研究の現場には、逃げずに話して吃音は治すべきもの、改善すべきものという前提がある。その根底にあるのは、吃音は悪いもので、劣ったものというイメージ。そうじゃないんだ、どもっても大丈夫ということを、この本を通して伝えたい」と思いを込める。
 また、吃音の子供や教師を主人公にした作品のある作家・重松清さんと、演出家・竹内敏晴さんが、吃音と自分らしく向き合うことについての一文を寄せている。解放出版社刊、1260円。
  平成20年(2008年)8月16日 土曜日 産経新聞

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/01/30

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