第26回島根スタタリングフォーラム 2日目

 島根スタタリングフォーラム、1日目の夜のスタッフとの交流会で公式プログラムが終わりました。この日、途中から冷たい雨になり、風も強くなりました。前日と比べて気温がぐっと下がったようでした。
 翌日、静かな朝を迎えました。あの雨だったので、早朝登山は中止だったかなと思っていたら、登れたそうです。僕は、寝ていましたが。
 午前中は、保護者との話し合いの第2弾でした。一晩寝て、何か考えたり感じたりしたことがあったかもしれないと思い、初めに質問を出してもらいました。その後、せっかくたくさんの方が集まってくださったのだから、話し合いだけではもったいないと思い、グループに分かれて、エクササイズをしてもらいました。前段として、僕が、吃音親子サマーキャンプで出会った子どもの話をしました。ひどくどもり、将来の展望がもてなかった子どもたち、吃音親子サマーキャンプで仲間と出会い、吃音と向き合い、考え、そして行動していった子どもたちです。その子たちにどんな力があったのだろうか、考えてもらいました。そのことを前段として、次は、ポジティブ心理学のいう、24の強みを説明して、うちの子どもにはどんな強みがあるだろうか、グループで話し合ってもらいました。最初、20分くらいの予定だったのですが、どのグループも話が弾んでいたようなので、少し延ばしました。最後に、グループごとに発表してもらいました。代表の人が発表しましたが、なんだかうれしそうです。自分の子どもの強みをみつけ、ことばに出していく作業は、楽しい時間だったようです。
 午後は、子どもたちも含めて全員集合して、「伊藤さんと話そう」のコーナーでした。子どもたちが、僕への質問を考えてくれていました。

・人生で一番どもったのはいつですか。
・どもってしまったとき、どうしますか。
・どもりをからかてきたとき、言い返した方がいいですか。何と言ったらいいですか。
・どもりを使って、何かできますか。
・どもりを気にしない友だちはいますか。
・どもらないようにする方法はありますか。
・大人になる上で、困ったことはありますか。

 質問した子がその場にいるので、少しやりとりしながら、答えていきました。この子どもの質問と僕の答えを、子どもと一緒に、保護者もことばの教室の担当者も聞いています。フォーラムに参加している全員で、ひとつのことに向き合う時間です。
 「どもりを使って、何かできますか」は、多分、初めてもらった質問です。考えたことはなかったけれど、考えてみれば、21歳からの僕は、どもりを使って生きてきたなあと思います。国立大学の受験に二度失敗したけれど、国立大学の先生になれたのは、どもりのおかげです。どもりを使って、本を15冊書きました。世界大会を初めて京都で開きました。その後、世界大会に6回参加し、基調講演も3回しています。全国吃音巡回相談会を、全国35都道府県38会場で開催しました。ここ島根では、島根県の聴覚・言語障害教育の先駆者である大石益男さんと出会いました。たくさん夢を語ってきましたが、ひとつだけ実現していない夢があり、それは、どもる子どもを主人公にした映画です。今、奥山大史監督の映画「ぼくのお日さま」が上映されています。奥山監督は、吃音親子サマーキャンプに参加して取材し、参加している子どもたちの声を活かしてくれました。僕は、きっとこんな映画を作りたかったのだろうと思います。

 26回という歴史を感じさせてくれる島根のスタタリングフォーラム。皆出席は、僕と、元ことばの教室担当者の松原洋司さんです。また、来年、元気で会えるようにと思いながら、会場を後にしました。一気に大阪に帰るのはしんどいので、よく、年末年始に訪れていた玉造温泉で一泊することにしていました。いい時間を過ごした心地よさの中、玉造温泉まで車を走らせました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/10/29

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