第33回吃音親子サマーキャンプ 最終日
いよいよ、最終日となりました。昨日と同じように、朝の放送で起きて、つどいをしました。ここで登場するのが、恒例のシーツシスターズ。いつ頃からそう呼ぶようになったのか、定かではないのですが、シーツ返却係の女性スタッフが、アイドルさながら登場し、シーツの返却のお知らせをします。初日のオリエンテーションで、所員の方から説明がありましたが、最終日、もう一度、返却の仕方をみんなの前で再現してくれるのです。単に連絡の形にしないのが、僕たちの仲間です。シーツシスターズという名前のサマキャンアイドル、1年に一度結成され、今年も大活躍でした。
朝食の後は、子どもたちは、劇のリハーサルです。その間、親は、子どもたちの劇の前座をつとめるため、集会室で「荒神山ののはらうた」の表現に取り組みます。話し合いのグループごとに詩を用意して、ふりつけを考え、からだ全体で表現します。緊張している子どもたちも、初めて見る親の姿にびっくりです。劇上演前の子どもたちのドキドキを同じように体験してみよう、親も自分の声や表現を磨こうと始まった親の表現活動、「荒神山ののはらうた」も、今年で18回目となりました。話し合いのグループは4つあるのに、用意した詩は3つというドジをしましたが、グーチョキパーで3つに分かれてもらい、短時間で仕上げました。この練習中の親たちの楽しそうなこと。参加回数が多くないのに、この伝統はちゃんと受け継がれています。見事に息のあったパフォーマンスを見せてくれました。
そして、いよいよ荒神山劇場のはじまりです。前座は、親のパフォーマンス。すてきなオープニングとなりました。そして、子どもたちの劇「王様を見たネコ」が始まりました。どもりながら、でも、楽しそうに参加しています。アドリブも効いています。衣装や小道具は、これまで作ってくれたものと、足りないものはスタッフの西山さんが手作りしてくれました。僕の家には、西山さんや今回参加できないけれど鈴木さんが作ってくれた衣装・小道具が、段ボールに5箱分くらいあります。
荒神山劇場の後、卒業式をしました。今年は、小学4年生から連続7回参加し、今年高校3年生になった男の子が卒業でした。卒業証書を渡し、本人の挨拶、連れてきた親にも挨拶をしてもらいました。卒業証書を渡すのは、サマーキャンプに3回以上参加することが条件です。サマーキャンプと出会うのが遅く、3回に満たない高校3年生が今回もこれまでもいましたが、この原則は崩していません。
最後にサマーキャンプ初参加の人を中心に、感想を聞きました。いくつか紹介します。
・誰も知っている人がいないので、参加する前は不安や心配があったけれど、我が子がどこにいるのか分からないくらい、すぐに仲良くなっていて、安心した。
・話し合いの時間が長くとってあるので、そんなに話すことがあるのだろうかと思っていたが、それぞれ深い話ができて、勇気づけられた。
・サマーキャンプがこんなに長く続いている訳が分かった。来年も、ここに帰ってきたい。
・始まる前は不安だったけれど、子どもの声にハリがあり、普段と違っていきいきとしていた。
・同じようにどもる子どもに会いたい、それもどもる女の子に会いたいと思って参加した。いい先輩に出会えてよかった。
・子どもより親の方が不安だった。どもる子どもの親と出会えて、縁を感じた。
・去年と比べると、劇の中に入り込んで、せりふをちゃんと言っていたのがうれしかった。
・願いは一つ。伊藤さん、長生きしてください。そして、サマーキャンプを続けてください。
おまけのショータイムがありました。西山さんが、新聞紙を使った手品を披露してくれたのです。破ったはずの新聞紙が、見事つながって、すてきな笑顔の僕たちや仲間が現れました。西山さんは、元ことばの教室担当者で、退職して何年も経つのに、サマーキャンプを大切に思ってくれているスタッフのひとりです。
最後の食事をして、バスが待つこどもセンターへ移動です。迎えには行けなかったけれど、見送りはしようと思いました。参加者もスタッフも、これから、遠い自宅に帰っていきます。そして、いつもの生活が始まります。楽しいことばかりではないかもしれませんが、なんとかサバイバルしてほしいと思います。今年、初参加のサマキャン卒業生が言っていました。「嫌なことがあっても、みんながそれぞれがんばっているんだと思うと、僕もがんばろうと思った」と。そんな力を育んでくれるサマーキャンプという場。また、来年、荒神山自然の家で、「おかえりなさい」と言って、みんなを迎えたいと思います。
お疲れ様でした。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/26