第33回吃音親子サマーキャンプ 2日目
吃音親子サマーキャンプ、2日目の朝6時、起床放送が流れました。つどいの広場では、サマキャン卒業生の若いスタッフが声をかけ、子どもたちが遊んでいます。つどいでは、サマーキャンプの黄色い旗を揚げ、ラジオ体操をしました。放送で流れる「元の隊形に戻ってください」のことばが、「元の体型」を想像させるので、「元の体型には戻られへん!」と、恒例の笑いになっています。
2日目の活動は、作文教室から始まります。毎年恒例の光景ですが、どもる子どもも、その親も、きょうだいも、スタッフも、参加者全員が、原稿用紙に向かいます。吃音にまつわるエピソードをひとつに絞って書きます。話し合いは、みんなで吃音を考えますが、この時間はひとりで自分の吃音に向き合うのです。90分、静かな時間が流れます。もし、作文が書けないとしたら、それはそれで構わないと思っています。みんなが書いている中、書けない自分と向き合うことも大切ではないかと考えているからです。結局、書かなかった子はひとりもいなくて、全員が書き終えました。
作文教室と並行して、参加経験が3回以下のスタッフのために、サマーキャンプ基礎講座を開いています。初めて参加したスタッフは、おそらく訳の分からないまま一日を過ごしたので、たくさんの質問・疑問があるでしょう。それに答え、これまでサマーキャンプが大切にしてきたことをできるだけ丁寧に伝えます。それぞれのプログラムの持つ意味、プログラムの順序の持つ意味など、サマーキャンプの歴史が語られるのです。僕はいつも、この時間、これまで参加したたくさんの子どもたち、親、スタッフの顔を思い浮かべます。あんな子がいた、こんなことがあったなど、32年間の歴史を語ればキリがありません。
作文の後は、2回目の話し合いです。作文を書いたことが少なからず影響している子もいます。話し合いと作文がサンドイッチ状態になっていることは、絶妙なプログラムだと思っています。
午後は、劇の練習と荒神山へのウォークラリーです。からだをほぐし、声を出し、劇の練習に入る前の準備を、それぞれのグループでした後、いろんな役を交代でします。誰に向かっているのか、話しかけている相手は誰なのか、相手のことばをどう受け止めたのか、ひとつひとつ考えながら、練習します。どもるとかどもらないとかは全く関係がないし、劇を上手に仕上げることが、重要なことではありません。子どもたちからのアイデア、アドリブを活かしながら、みんなで作り上げる楽しさを存分に味わっているようです。劇が嫌で昨年参加を見送った子どもがいました。1回目の練習では、交代して役をすることさえ消極的な子どももいました。強制はせず、そのままを受け止めつつ、練習は進んでいきます。
と、劇の練習風景を書きましたが、実は、僕は、この場にいません。別プログラムがあるため、書いたことはあくまでも想像です。夜のスタッフ会議で様子を聞かせてもらいますが、基本的には、生活・演劇グループのスタッフたちが独自にすすめています。
午後3時半から、荒神山へのウォークラリーです。それぞれのグループごとに、出発しますが、グループのリーダーはサマキャン卒業生です。何度も登って、荒神山のことはよく知っていますが、事前に自然の家の所員の方と打ち合わせをして、安全第一で、計画を立ててくれました。僕は、実は、このウォークラリーにも参加したことがありません。一度も、荒神山に登ったことがないのです。
子どもたちが劇の練習をし、ウォークラリーに行っているとき、親は学習会を行っています。このプログラムを僕が担当しています。午後1時から5時過ぎまで、かなり長い時間の学習会です。この親の学習会も、これまでいろいろと変化してきました。ひとりの子どもの例を出して、その子のもつ力について、グループで話し合い、模造紙にまとめたこともありました。アサーションについて説明して、その演習をグループごとに、みんなの前で演じてもらったこともあります。最近は、初参加の人が多いので、その人たちが持っている疑問・質問にはきちんと答えたいと思い、対話形式の時間にしています。どもる子どもに同行する親として、知っておいてほしいことがたくさんあります。今後、子どもが何かSOSを出してきたとき、一緒に考える土台となる知識・情報はもっていてほしいからです。初めは、こんなに長い時間と思うようですが、終わってみれば、あっという間だったと、初参加の人が言っていました。これまでに相談に行ったところで言われたことについて疑問に思っていたことが解決したと晴れ晴れとした顔になった人もいました。
荒神山から無事戻ってきた子どもたちを迎え、夕食の後、親たちはやっと一息。フリートークの時間です。和室の部屋は、子どもたちが練習に使っているので、学習室やホールで、それぞれに話していました。
子どもたちは、劇の練習です。役の本決めをして、立ち位置も考え、練習に熱が入ります。
長い一日が終わって、スタッフ会議が始まるのは、午後9時過ぎ。2日目の一日を振り返り、それぞれのプログラムごとに気づいたことを話し、みんなで共有していきます。出てきた話がつながっていくので、気がつくと、10時半近くになっています。 こうして、サマーキャンプ2日目が終わりました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/25