第33回吃音親子サマーキャンプ 1日目

 8月16日、第33回吃音親子サマーキャンプの初日です。
 台風で新幹線が全面運休しているとは思えない滋賀県彦根市の天気でした。僕たちは、先発隊として、みんなより少し早く荒神山自然の家に到着しました。ここ数年、スタッフのうち何人かが先発隊として、早く来て、参加者に配るしおりや劇の台本や、スタッフの進行表などの製本、シーツの配布など、事前の準備をしてくれるようになりました。今年は、前泊組もいたので、先発隊の人数がいつもより多く、早く終わって参加者を待ちました。
 河瀬駅に、自然の家行きのチャーターバスを用意しました。いつもの黄色い旗が参加者を出迎えます。初参加組はドキドキしながら、リピーターは1年ぶりの再会を喜び合いながら、バスに乗り込みます。バスが到着する所は、自然の家とは少し離れています。例年、そこまで迎えに行っているのですが、今回は暑さと腰痛のため、勘弁してもらいました。
 集会室に集合し、自然の家の所員さんからのオリエンテーションを受けました。途中、車組やバスに間に合わなかった人たちが集会室に到着し、人数が増えていきます。
 その後、参加者には部屋に入ってもらって、スタッフ会議です。今年のスタッフは、キャンセルがあって、39名。初めて顔を合わせる者もいます。学習室に集まり、簡単に自己紹介。そして、1日目の流れを確認しました。細かい説明をする時間がないので、初めて参加するスタッフは、訳が分からないままスタートするのですが、不思議なことに、それぞれに様子を見ながら、適切に動いてくれています。見事というほかない、僕たちのスタッフの力です。
 開会のつどいでは、まず主催者として僕があいさつをしました。2年前の吃音親子サマーキャンプに参加し、そこでどもる子どもを取材した映画監督・奥山大史さんの「ぼくのお日さま」の話をしました。カンヌ国際映画祭に出品した映画です。2年前の奥山監督のこと、映画の試写会に行ってきたこと、全国公開されたらぜひ見てほしいことなどを話しました。
 そして、サマーキャンプに参加した2人の女の子の話もしました。結婚することになり、その結婚届けの証人になってほしいと頼んできたあおいちゃんのこと、2011年の東日本大震災で亡くなったりなちゃんのこと、僕は、この子たちのことを伝えていくのが大切なことだと思っています。
 参加者を紹介し、3日間生活をするグループに分かれて名札やしおりを渡し、いよいよ活動1の出会いの広場です。これは、千葉のことばの教室の教員の渡邉美穂さんが担当してくれています。初めての参加者の不安が少しでも減り、リラックスして参加できるようにと、エクササイズを工夫して進行していました。1時間ほどの間に、みんなの顔が柔らかくなり、笑い声もたくさん聞かれるようになりました。初参加者も多いのに、かなり難易度の高い表現活動も楽しくこなしている姿を見て、僕は、今年のキャンプもうまくいきそうだと思うのです。
 夕食の前後に、スタッフが上演する劇の復習をしました。指導してくれている渡辺貴裕さんは東京在住なので、当初は2日目からの参加になるだろうとの連絡を受けていました。渡辺さん抜きで復習をし、みんなの前で上演するのは少し不安だったのですが、渡辺さんが運休の東海道新幹線とは別ルートを探してきてくれました。北陸新幹線を使って、金沢を廻って河瀬駅に着くというルートです。おかげで、少し遅れたけれど、復習にも上演にも間に合いました。
 夕食の後は、1回目の話し合いです。親は4つのグループに分かれ、子どもたちは、小学2・3年生、5・6年生、中・高校生、きょうだいと分かれました。ファシリテーターとして、どもる人とことばの教室担当者や言語聴覚士が入ります。サマーキャンプに行ったら、こんな話をしたいと前もって考えて参加した子もいるようです。自分にとって大切な吃音の話題について、きっちりと向き合い、経験を話し、ほかの人の話を聞きます。
 夜8時から、スタッフによる劇の上演です。できるだけせりふを覚えてこようと伝えていたので、みんながんばって覚えてきていました。劇のあらすじをつかんでもらうことと、自分は何の役をしようかなと考えるときの参考にしたもらうこと、が目標です。ちょっと長い劇だったのですが、子どもも親も、真剣に見ていました。いい観客のおかげで、演じたスタッフも、いい感じでした。
 夜の9時から、スタッフ会議です。なんと長い一日だったでしょう。スタッフ会議で出てくる子どもたちの話、細やかな観察に、僕はいつもすごいなあと思います。何気ないことばをちゃんとつかみ、丁寧に対応してくれているスタッフは、本当に強い味方です。ひとりひとりの細やかな対応と、お互いの連携とそれらがつながって、スタッフにも、スタッフのセルフヘルプグループができあがっているようです。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/23

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