第11回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会、無事、終わりました
7月27・28日の2日間、千葉県教育会館で、久しぶりに講師を迎えて、第11回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会を開催しました。
今回の講習会の講師は、長いおつきあいのある東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんでした。また、今回のテーマは、「やってみての気づきと対話~どもる子どもが幸せに生きるために、ことばの教室でできること~」でした。
始まる2日前には、多くて40人かなという状況だったのですが、終盤、参加者がぐんと増えて、50名になり、印刷した資料集が足りないかもと心配しましたが、当日キャンセルがあって、結局は48名でした。沖縄、鹿児島、新潟、山形など、遠いところからの参加もありました。
講師の渡辺貴裕さんとのおつき合いは、25年ほど前に遡ります。大阪での竹内敏晴さんのからだとことばのレッスンに、レッスン生として参加していた、当時大学院生の渡辺さんに、吃音親子サマーキャンプに参加しませんかとお誘いし、渡辺さんが参加したことから始まりました。竹内さんが2009年にお亡くなりになってからは、竹内さんの代わりに、サマーキャンプの大事なプログラムである演劇の担当として、スタッフへの演劇指導の事前レッスンからお世話になっています。今年も、講習会のつい2週間前、吃音親子サマーキャンプの事前レッスンでお世話になったばかりでした。
1日目、最初のプログラムは、僕の基調提案でした。どもる子どもとの対話ができない、難しいという声を聞くので、なぜできないのだろうか、なぜ難しいのだろうかということをテーマに話を展開していく予定にしていました。その答えは、昨年6月、鹿児島県大会で話したことの中にあると思うのですが、それは今回の資料集の中に入れていたので、同じような話をすることもないかと思い、急に予定を変更しました。
そもそも、「どもる子どもってどんな子?」という問いかけから始めようと思いました。吃音とは? どもることとは? という話はよく出てきますし、本にもそのようなことばを章立てしているものを見かけることはあります。しかし、どもる子どもとは?という問いかけはあまり見たことがありません。
そこで、実際に、2人組になり、どもる子どもと担当者になって、対話をすることで、参加者のもつ、どもる子どもの像が明確になるのではないかと思いました。
参加者のみなさんは、最初からそんなワークをすることになるとは想像されていなかったでしょうから、きっと戸惑われたことと思います。
どうしても、今、自分が担当している子どもの姿から、どもる子どもを想像してしまいがちですが、実際にはいろんな子どもがいます。今、とても明るく元気でも、将来ライフステージが変わると、どんな悩みをもつか分かりません。担当者の思い込みで、子ども像を決めてしまわないで、当の本人に聞いていくという姿勢を大切にしてほしいと思いました。そのための対話なのです。戸惑いの中で始まった講習会でしたが、最初の頃は、不安げだった参加者も、だんだんと表情がやわらかくなり、その場の自分の気持ちを素直に表して、楽しんでいたように見えました。
午後の渡辺貴裕さんのワークショップになると、渡辺さんの魔法にかかったかのように、ワーク、ふりかえり、グループで場面やシーンをつくり、ふりかえり、考え、動き、みんなでシェアし、など、頭と身体を目一杯動かした研修会になりました。 次々と出される課題設定が刺激的で、新鮮な研修会になりました。
まさか本当に、夜の8時45分まで研修をするとは思っていなかったという初参加者もいましたが、プログラムに書いてあったとおり、きっちり8時45分までして、1日目を終えました。ハードな一日が終わり、心地よい疲れの中に、満足感もたっぷりでした。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2024/07/31