第33回吃音親子サマーキャンプ 事前レッスン 3  ~吃音親子サマーキャンプは、事前レッスンから始まる~

 事前レッスンの報告の前に、うれしい話を2つ紹介しました。吃音親子サマーキャンプは、今年、33回を迎えますが、本当にいろいろなドラマを生み出してきました。小学生として参加していた子が卒業して、またキャンプのスタッフとして戻ってきてくれるなんて、なかなかないことでしょう。僕たちがキャンプで伝えたかったことをしっかりとつかんでくれた子が、今度はスタッフとして、どもる子どもたちに伝えてくれている、そんないい文化、いい伝統が受け継がれているのです。

 さて、今年の事前レッスン、22人の参加でした。東京、埼玉、千葉、静岡、三重、愛知、兵庫、新潟、大阪など、かなり遠くからの参加もありました。この事前レッスンを担当してくれているのが、東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんです。渡辺さん自身、吃音とは全く関係ありませんが、大学生の頃から今まで欠かさず、25年このキャンプに参加し、竹内敏晴さんが亡くなった後、竹内さんのシナリオをもとにした演劇をスタッフが子どもに指導するための事前レッスンの担当をしてくれています。

 今年の演劇の演目は、トラバースの作品の「王様を見たネコ」。10年ぶりの上演です。登場するのは、知識集めに夢中になり、「自分がこの世で一番賢い」と思い込んでいる王さまと、そんな知識はないけれど、ある意味賢い総理大臣や側仕えや妃。彼らは王さまには困っていますが、王様のことは大好きです。そして、王さまに大切なことを思い出させる役割を果たすのが、ネコです。

 初めはからだを動かし、声を出し、歌を歌い、演劇に入る準備をしました。みんながいろんな役を交代でしていきます。途中でストップしては、小さなグループを作り、似た場面を演じたり、せりふの言い回しを考えたりします。すると、舞台の上で繰り広げられる世界の厚みが広がります。このエクササイズが、サマーキャンプ当日、子どもたちと劇を作っていく上でとても役に立つのです。
 立候補したり、推薦したりして、役が決まっていきました。積極的に出ていく人、遠慮がちな人、それぞれの性格が表れます。衣装や小道具のことも相談しました。いつも、衣装・小道具を担当してくれる人には、これとこれとこれがいる。これはこうして…とアイデアが浮かぶようです。長年続けているので、これは私の出番だと思って、自ら仕事を分担してくれるスタッフたち。ありがたいことです。
 二日目の午後、ようやく形になり、通し稽古ができました。録画して、それをみんなで共有し、復習をします。当日までの自主練です。

 「サマーキャンプは、事前レッスンから始まる、そう言われるのがよく分かった。去年、思い切って事前レッスンから参加したら、サマーキャンプがいつもの何十倍も楽しかった」、そう言ったスタッフのことば、うれしかったです。
 吃音親子サマーキャンプは、ここ、事前レッスンから始まります。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/07/18

Follow me!