第5回 ちば吃音親子キャンプ 2日目 千葉に根づく吃音親子サマーキャンプの伝統
「ちばスタタリング・ナウ」の旗のもと、ラジオ体操から、2日目がスタートしました。
2日目の最初の活動は、作文を書くことです。これも、滋賀県の吃音親子サマーキャンプと同じです。みんなで話し合って、刺激を受けて、自分のことを振り返ることも大切ですが、ひとりで自分や吃音と向き合う時間も大事です。作文は、それにふさわしい時間で、子どもも親も、もくもくと原稿用紙に向かいました。その間、僕は、スタッフのことばの教室の教員の質問に答えていました。
その後、親子が別々になり、親は学習会のつづき、子どもは、歌舞伎の白浪五人男の口調を真似て「知らざあ、言ってきかせやしょう」から始まる自己紹介を考えました。大きな声で、ゆっくりと、リズムにのって、自己紹介をします。自己紹介を苦手とするどもる人、どもる子どもは少なくありません。歌舞伎のリズムで自己紹介ができるところはないでしょうが、嫌だ、苦手だと思っている自己紹介で、こんなに楽しく面白く遊べると思えることがいいのです。自己紹介って、案外おもしろいものだなと思えることこそが、吃音と上手につきあっているということでしょう。その後、残りの時間を使って、昨日作ったカルタでカルタ取りをしました。絵札の数が少なくなると、同時に「ハイッ」となるので、最後はじゃんけん大会のようになってしまいました。
昼食後、全員が集まり、大きな輪になって、最後のプログラムのふりかえりをしました。子どもたちひとりひとりが、「知らざあ、言ってきかせやしょう」の自己紹介を披露してから、ひとりひとりの感想を発表していきました。主なものを、メモをもとに紹介します。
・友だちができて、遊べたし、勉強したし、楽しかった。
・こんな考え方があるんだと気づいたり、ああ、そうなんだよねとうなずいたり、心がとても軽くなった。
・これから、吃音に対して理解がない場面に出会うこともあると思うが、ここで学んだことや出会った仲間のことを思い出してほしい。
・先回りして、子ども抜きで決めないことはとても大事だと思う。
・今回、参加できなかった子がいるけれど、ぜひ、来年は誘って一緒に参加したい。
・同じようにどもる子どもと出会い、勇気をもらった。
・なんだか親学のセミナーを受けているようだった。伊藤さんの本は読んでいたので、書いた本人と会えてうれしい。
・あなたはあなたのままでいい、このフレーズがずっと心に残っている。
・同級生にどもる人が2人いる。どう接したらいいのか分からなかったけれど、今回参加して、こんなふうにしたらいいのか、こうしたらどもる人はうれしいのか、ということが分かってよかった。
・滋賀のキャンプに長く参加してきて、去年卒業した。今回、千葉のキャンプに参加して、なんだか懐かしかった。参加している人の雰囲気が似ていて、温かいと思った。
僕は、滋賀の吃音親子サマーキャンプで感じた同じことを感じていました。集まってくるどもる子どもやその保護者、そしてスタッフであることばの教室担当者、そのみんながどの人も、その人らしく、優しく温かいなあということです。滋賀と千葉、遠く離れているのに、つながっていると感じました。世の中、捨てたもんじゃないなあと、人のもつ力を改めて思いました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/10/10