~メール・吃音親子サマーキャンプに参加して~

3日間お世話になりました。

 吃音親子サマーキャンプには、初めての参加で、旅慣れしていない私たち家族は、まず、準備することから大変なことでしたが、終わった今振り返ると、親子ともども、とても大きな経験をさせていただいたなと思っています。

 娘に感想を聞くと、「楽しかった! 自分の他にもどもっている人はたくさんいることがわかった。また来年も行きたい!」と言っていました。

 この感想を聞けただけで、私は、思い切ってキャンプに参加して、よかったなと思います。小4は1人だけで、女の子もいませんでしたが、卒業後スタッフとして参加されていた方々、またスタッフの皆様のあたたかさがあってこその、娘の発言だと思います。

 吃音の話を聞いていると、人生の生き方を教えていただいているようで、吃音あるなし関係なく、心に響くものでした。

 勇気を持って一歩を踏み出す。とにかく声を出すことが大事。自分にとってマイナスと捉えている部分も、自分の一部、特徴として、見方を変え、受け入れる。そして、受け入れた時に、見え方が変わってくる。

 人生の生き方そのものだと思います。そして、ここに至るようになるには、自分が自分と向き合い、葛藤や苦しみを乗り越えることが不可欠なのだろうなと思います。

 娘も自分で苦しまないといけないときが必ずくると思います。でも、勇気を出して、向き合って、自分の一部と捉えることができた時、それはとてもすごいことだと思います。

無敵です。

 私にとっても、キャンプ参加前と参加後では、心が前向きになるという変化がありました。夏季休暇前、色々あり心が疲れてしまっていました。初参加だったことや慣れない環境で、正直疲れもしましたが、なぜか心は軽やかになっています。まるでセラピーに行ったようです。

 また明日から、日々の生活が始まるわけですが、この3日間でいただいた『活力』を、忘れないようにしたいです。本当にありがとうございました。すべてのスタッフの皆さまに、改めて心より感謝申し上げます。

 また来年も、キャンプが開催されることを、期待して、、、この1年、頑張ろうと思います。本当にありがとうございました。

  2022年9月            東山久子

吃音相談会に参加して

吃音相談会で涙を流したこと 田中多佳子(小学3年女子をもつ親)

 当日、自己紹介の時に、私は涙が溢れて止めることができませんでした。なぜ、涙が出たのか、あの日、私は帰り道、考えました。あれは、今まで娘の吃音について一人で悩んできた私が、初めて同じ悩みを持つ人の輪の中に加えていただき、心から相談できる喜びの涙でした。

 私は大阪吃音教室のこと、吃音相談会のことは、新聞の案内を見て初めて知り、親子相談会の参加を申し込みました。今まで、そんな会があることも知らずにいた私は、申し込んだ時から、この相談会にさえ相談に行けば娘の吃音は100%治るものだ、それも、そんなに時間がかからずに治ると期待に胸ふくらませて参加したのです。

 ところが、皆様の自己紹介を聞いているうちに、私の考えは甘くて、吃音は私の考えているように簡単には治らないんだと察しました。娘の8歳という年齢から考えて、この方たちのように成人しても、今から、40年、50年も悩み続けるのかと思うと、娘が不憫に思えて、また、涙が溢れてしまったのです。

 でも、この考えこそが、どもる皆様を差別しているような、誤った考え方でした。申し訳ありません。

 伊藤伸二さんの講演を聞く前の自己紹介の時の、私の正直な気持ちを、失礼な考え方と存じ上げながらもあえて書かせていただきました。お許し下さい。ただ、吃音相談会に望みをかけていた希望の風船がパチンとはじき消えたような心中もお察し下さい。

 しかし、これはあくまでも相談、講演前の気持ちであって、相談、講演によって、心は随分と明るくさせていただきました。

 グループ相談では、同じ年頃のお子様をお持ちのお母様方とご一緒させていただき、共感できる意見が多々ありました。

 私の住んでいる市と違って、他の市には、ことばの教室があり、ことばの教室の先生がこの相談会に参加したり、その教室に通っておられたり、また、学校の先生の紹介でこの相談会に来られた方のお話を聞いて、他の市の先生方は積極的に働きかけておられるのだとうらやましくも感じました。

 ことばの教室の存在すら知らなかった私は、娘を治してやりたいと思いながら、今まで何の努力もしてきませんでした。せいぜい図書館で本を借りて読むくらいでした。そして、口では娘に「大きくなったら治るからね」などと、本当に子どもだましの気休めを言って育てていました。娘がどもり始めて約5年間ほど、私は一体何をやっていたのだろうと思います。

 ある本には、どもりを作るのは母親の責任のように書いてあり、それを信じ込んで私の育て方に非があったのではないかとずっと考えていました。娘には「どもるのは、お母さんが悪いのよ。あなたのせいではない」と話していたことを伊藤伸二さんにお話しました。すると即座に、「誰のせいでもなく、母親の責任でも決してない」と断言され、心が軽くなりました。娘を救う以前に、私の心が救われました。

 ですから、その後の講演で「どもりは治らないかもしれない」と伊藤さんがおっしゃったときにも、大きな失望は感じませんでした。それよりも、「もう、そんなことはどうでもいいんだ」という気持ちも芽生えてきていました。そして、彼女の良い面を伸ばしてやりたいと思います。娘の吃音よりも、私の心の方が病んでいたように思います。

 吃音相談会後、娘には今まで“どもり”ということばで話してやっていなかったので、「さっちゃんのアーアというのはどもりと言うのよ」と、どもりということばを正しく教えました。

 そして、今まで「治る、治る」と言い育てていた手前、娘の反応が怖かったのですが、「大人になっても治らない」と話しました。「なんで?」という答えが返ってくるのではと恐れ、また泣かれるのではとないかとも思っていましたのに、「別にいいやん、そんなこと。どうでもいいよ」という答えが返ってきました。あまりにあっさりした反応に、分かっているのかな?と思う気持ちと、既に友達に指摘されて嫌な思いもしているのに、分かっているはずだのにという思いです。

 彼女は小さいながらも、今は子どもなりに、自己受容ができているのではとも思いました。ただ、これから思春期を迎えていく間に、この気持ちが否定されないように、この大らかな性格で育ってほしく思います。

 私自身も、吃音相談・講演会後、大きく成長できたように思えることがあります。過去に4回(保育園・幼稚園・小学1・2年)と、担任の先生に娘の吃音について私からお話しています。なぜか、先生の方から切り出されることは今回も含めて一度もありません。

 「どもるんですけど…」と私は話していました。この語尾の「ですけど…」の部分に私の全ての気持ちが含まれているように今になって思います。

 自然と、このように話していたのですが、「ですけど」と問いかけることによって、先生から「大丈夫ですよ」と返答されることを期待していたのです。心の奥で娘のどもりを認めたくない気持ちが働き、どもりを否定してほしかったのです。そして、4回とも、何の知識もない先生の、「大丈夫ですよ。お友達もたくさんいるし、明るいし、まだ今はことばより気持ちが先走ってどもってしまうのですよ。また、そのうち治りますよ」のことばを信じたくて、とりあえず娘のどもりは治ると思い込むことにで安心しようとしていたのです。

 伊藤さんの講演の最後で、「何の根拠もないのに、大丈夫などということを信じていたのですか?」という内容の質問を伊藤さんからされて、「はい。娘は明るいから」などと答えたのですが、本当に愚かな答えでした。本当は、私自身がどもりを否定したくて、娘の吃音を全く受け入れていなかったのではないでしょうか。

 今年も家庭訪問がありました。先生に私の方からお話しましたが、「どもりです」と言えました。相談会に参加して、その時の話を娘にしたこと。娘はクラス替えで、前のクラスのお友達にも、また新しいクラスのお友達にも指摘されたり真似されたりすることがあるが、親も子も気にせずにいたいと思っていること。そのことを強いて先生に注意していただかなくてもよいと思っていること。ただ自然に受け入れたいと思っていることなどをお話しました。

 これは、私にとって大きな成長でした。「どもりです」と言えたことで初めて私の中で娘の吃音を受け入れられ始めたように思います。

 新クラスで2か月過ぎようとしていますが、娘は特に落ち込む日もなく、毎日楽しく通学しています。大阪吃音教室と相談会に出会えていなかったら今頃はまだまだこんな気持ちになれずに、今年もきっと「どもるんですけど…」と切り出していたに違いありません。

 過去5年間ほど、私は何をやっていたんだろうと思うと、もっと早く伊藤さんたちに出会いたかったという気持ちがありますが、娘のこれから先の人生を考えると、まだまだ早いこの時期に、今回の相談会に参加できて本当に嬉しく思います。

 私は全くの初めて、他のどんな教室にも参加したことがなかったので、全てにおいて勉強になりました。最初の自己紹介の時、体ごとこちらを向いて聞いて下さる皆さんに、凄いパワーを感じました。圧倒されたといってもよいくらいで、同時に心から相談できるという信頼感も生まれました。

 皆さんのお話の中で、電話に出られない、食べたいものを注文できないということに、本当に大変な思いをされているのだと知りました。

 講演はすごくひきつけられるお話ばかりでした。特に、「どもっていてもなれない職業はほとんどない」ということばに、本当に勇気づけられて印象深く心に残っています。参加していたどもる先生が新着任校での挨拶の時にどもりまくったというお話に、参加していた皆様と共に私も笑ってしまいました。これはその方の大変な思いを十分にご存知の皆さんが笑われたことも、頭では大変だろうなと考える程度の私が笑ったことも、同じ笑いだと思うのです。うまくことばで表現できないのですが、決してどもりを軽蔑した笑いではなく、温かい笑いなのです。でないと、遠慮して決して笑えないですよね。これが、大阪吃音教室の温かさだと思います。

 娘がどもっても「どもっちゃったあー」と、本人も親も周りも温かく笑いたいです。

 もう一歩確実に前に進みたくて、この夏の吃音親子サマーキャンプに家族全員で参加致します。

~手紙・相談会に参加して~

昨年12月5日の横浜吃音相談会に参加させていただきました木村遼の母の木村春子です。相談会ではありがとうございました。

 現在中学1年の次男が3歳頃からどもることに気づき、市のことばの先生に相談をしました。小学校に入っても授業参観の時の発表など、ことばの出だしが「繰り返し」の状態でどもっていましたが、一度ことばが出るとあとは普通に話していて調子の良い時や悪い時もありましたので、そのまま特に何をするでもなく過ごしていました。

 ところが中学1年の夏休み頃からどもりが急にひどくなり、今までの繰り返しの状態ではなく「・・・・・」とつまりが10秒位長い間が続くような状態が続き、しまいには話すのをやめてしまうようになってしまったのです。何か質問をしても最初は本人も話そうとするのですが、ことばが全く出ないため、話す事を諦めるようになりました。家でもこんな状態なのだから外で友達と話す時や部活で学年の違う、どもる事を知らない先輩などと話す時は辛い状況にあるであろうと心配していました。

 そして夏休みが終わり、二学期に入ると朝起きてもとても暗い顔をして学校へ行く準備もなかなか進まず、暗い顔で家を出て行く日が続きました。金曜日学校が終わり家へ帰ってきた時が一番ほっとして明るい表情になる時でした。学校がない土日が嬉しかったようです。

 毎日大丈夫かなと心配していたある日、朝起きても全く学校に行く支度をせず部屋でとても暗い顔をして下を向いて座っていました。「学校、遅刻するから早くしなさい」と言ってもなかなか動かず、「学校に行きたくないの?」と質問すると「学校でみんなの前で話す発表があるから…」とやはり学校での発表が嫌で学校に行きたくないという限界がきたようで普段は全く泣く事などないのに突然わっと泣いて「行きたくない」と言いました。たしかに全く言葉が出ない状態だったのでよほど辛かったと思います。

 「じゃあ、今日は休もうか」と言った瞬間とても穏やかな表情に変わりました。学校の先生にも説明して休ませました。時には学校で具合が悪くなったと言って保健室で休んでいた事もあったようでした。一度休むと、それからまた何日かしてまた休みたいと言うようになりました。学校に行きたくないこともよくわかりましたが、このままではどうなってしまうんだろう、どうしたらよいのだろうと私は考える毎日でした。本人に「ことばが出るように練習や努力もしてみなよ!」などと言い、本人は泣きながら「そんなのやってるよ!」本人が一番どうしていいかわからない時にそんなひどいことばを言ってしまったことを後悔しました。

 毎日悩んでいても何も変わらないと思い、市の保健センターに電話をして相談したところ息子の年齢が大きいため、市の相談所では対応できないとの事でいくつかの吃音の相談に合う病院を勧められました。早速いくつかの病院に電話をしてみたところ、ある小児精神科の予約をとることができました。すぐにでも診てもらいたかったのですが、その診察の予約は1ヶ月半後位でした。そんなに先の診察になってしまうのか…と思いながらインターネットでも調べてみたところ、伊藤伸二さんのホームページと出会いました。

 そこで伊藤さんのプロフィールなどすべて読み、ホットラインまであることを知り、早速電話をしました。本当にご本人と電話で話せるとは思わなかったのでびっくりしました。息子の現状を相談すると、伊藤さんは息子の気持ちがよくわかると、そして私の悩みにアドバイスを下さいました。その後すぐに、『どもる君へ いま伝えたいこと』『親、教師、言語聴覚士が使える 吃音ワークブック』『両親指導の手引書41 吃音とともに豊かに生きる』の3冊を購入しました。

 そして本が届いてすぐにはじめは私が声に出して読んで聞かせました。ただただ黙ってずっと聞いてくれていました。読み終えると、「苦しんでいるのは遼(息子の名前)だけではないんだよ。伊藤さんのように吃音に苦しみ、でも今では考え方も変わりとても立派な人になっているんだよ」と伝えてから数日後、あれだけことばが出なかったはずなのにどもりもせずに話せるようになったのです。本当に心の中で驚きました。

 息子の気持ちの中で伊藤さんの本を読んで、また、自分だけではないんだと知って心が軽くなったのでしょうか? 信じられないほど普通に話せているのです。そんな時に相談していた学校の担任の先生からも「遼君、最近表情も明るくなり学校で普通に話せていますよ」と電話がありました。私も担任の先生に伊藤さんにめぐりあえたことを説明し、「遼の中で良い方向へ気持ちの変化があったのかもしれません」と伝えました。

 そしてすごいタイミングで先日の吃音相談会の案内の連絡がありました。私は伊藤さんとお電話で話し、本を読んでからご本人と直接会ってみたいと思っていましたが、お住まいは関西とのことだったですし、私は関東なので先生に実際に会えるこんなチャンスはないと思い、横浜相談会に参加させていただきました。

 ああいう会に参加するのは初めてだったので緊張しましたが、今まで同じような事で苦しんでいる人とは出会った事がなく、私と同じように考えている他の親御さんたちのお話も聞けて、全く同じことで悩み、同じように大切な自分の子どものことを思い悩んでいる人に直接会えたことで、悩んでいたのは自分だけではないんだと今まであまり相談もできずにいた重たい気持ちが、説明会が終わり帰る時には軽くなった感じでした。

 相談会の数日後、冬休みに入る前の中学校の先生との保護者面談がありました。

 そこで担任の先生から「遼君があれほど話せるようになり、変わったのには正直びっくりしました」と言われ、「お母さんが出会ったという人の事を教えて下さい」と言われましたので、私はもし他でも同じように悩み苦しんでる人がいたら学校の先生なら伝えてくれるかもしれないと思い、伊藤伸二さんの名前を伝えました。

 担任の先生は「私もあとで調べてみます」とおっしゃってました。

 息子がどもりがよくなったのは同じ経験をし、それとずっと向き合ってきた伊藤さんのことばが心に響いたんだと思います。吃音に苦しんでいない人からこうしてみたら? などと、息子からしたら僕の苦しみなんてわかるわけないのに!! と思っていたに違いありません。

 そして、今では普通に話している息子が学校も休まず前のように暗い顔をしていないのが本当に親として幸せです。今後もこのような会がありましたらぜひ参加させていただきたく思います。

           2016年1月26日

                                木村春子