「どもる君へ  いま伝えたいこと」

どもる君へ いま伝えたいこと 伊藤伸二 


「どもる君へ いま伝えたいこと」の著者 伊藤伸二が、この本に対する執筆への想いと、
「皆様へのメッセージ」をお送り致します。是非ご覧下さい。

A5判並製 96頁 定価1,200円+税

ISBN978-4-7592-6715-0 C0037


解放出版社 「どもる君へ いま伝えたいこと」 書籍案内

   

 

どもる君へ、今、伝えたいこと

〜 はじめに 〜

 この本を手にとってくれた君、ありがとう。
 君がこの本を手にとって読み始めてくれたことが、ぼくはとてもうれしい。ぼくはこれまで10冊の
どもりに関する本を書いているけれど、この本を書いているうちに、これが、ぼくが一番書きたかった本
なんだと気がついたからだ。

どもりは、「そんなことぐらい気にしないで」と周りから言われるほど単純で軽いことじゃない。
 どもりは、とても人間らしい悩みで、古くは紀元前のギリシャの時代から、どもる人の悩みは記
録として残っている。また何人もの小説家が自分のどもりについて書いている。

 大昔からたくさんの人がどもりに悩み、どもりを治そうと、努力してきたことも伝わっている。
どもりを研究する学問も、100年近い歴史があり、どもりを軽くしたり治そうと指導する臨床家
といわれる人が世界中にたくさんいる。

 君がどもることで困り、悩むのは当たり前のことなんだ。ぼくなんか21歳まですごく悩んでい
たし、世界的に活躍した有名な人で、30歳や50歳まで悩んでいた人がいる。君がひとりで考え
るほど簡単なことではない。

 ぼくは深刻に悩んでいたとき、真剣にどもりに向き合ってこなかった。21歳の夏に、初めて同
じようにどもる人と出会ってから、勉強し始めた。それから40年以上、どもりに取り組み、ども
りについて考え続けてきた。

 どもる人の会や研究会をつくり、世界大会を初めて京都で開き、国際組織を作った。また、子ど
ものための吃音親子サマーキャンプは今年で19年になる。世界のたくさんの人の体験が集まった
ことで、どもりとどのようにつきあえばいいか、ぼくなりに整理ができた。

 だから今、ぼくが40年以上考え、実際に行動して、失敗したこと、とてもよかったことを、君
のようにどもることで困ったり、悩んでいる人に伝えたかったんだ。

 ぼくは今、たくさんの友達がいて、自分の好きな仕事をし、充実した楽しい人生を送っている。
今からみると、なぜあんなに悩んだのだろうと不思議なくらいだ。だけど、あんなに悩んだから今
のぼくがある。悩んだことに意味があったんだ。

 自分の人生は良かったと思えた瞬間に、過去の苦しかったことは、オセロゲームの黒がばたばた
と白に変わるように、大切な意味のある経験に変わる。
 ぼくが幸せに生きられるようになったの
は、偶然の人との出会い、本やできごととの出会いのおかげだ。あのとき、あの出会いがなかった
ら、ぼくはまだ悩んでいたかもしれない。

 人や本やできごととの出会いはとても大きな意味をもつ。だから今、君と出会えたことが、とて
もうれしい。

 誰も君の人生を代わりに生きてあげられない。君がどんなにつらくても、悩みの中から自分の力
で自分の人生を見い出していくしかない。君とぼくとは違うけれど、ぼくの経験を伝えることで、
少し、君の役に立てそうな気がする。

 子どもの頃に、どもりの正しい知識や考え方を教えてくれる人がいたら、違う学童期、思春期を
送れただろうと思う。

 悩み方に上手下手と言うのは変だけれど、ぼくは逃げてばかりいたから、損な悩み方をしてきた
と思う。人間は悩みながら生きていく。悩んでもいいけれど、悩みが君にとって意味のあるものに
なるために、君とどもりについて一緒に考えたい。

 ちょっと違った見方が君に広がればいいなあと思う。

 たくさん失敗してきた先輩として、「こんなことには気をつけてね」と書きたかった。少しでも
参考になればうれしい。

 君にとって、内容が少し難しいところがあるかもしれない。その時は、家族や先生に手伝っても
らって読み進めてほしい。この本がきっかけで、君が周りの人にどもりについて話し、一緒に考え
るきっかけになればいいね。

 質問は、吃音親子サマーキャンプや電話相談でよく受けることだ。そのほか、ぼくの仲間の小学
校のことばの教室の先生が教室で子どもから受ける質問を出してくれた。

 君が質問したかったことがあればいいけどね。読んで疑問が出てきたり、
違う質問があれば、メールでも手紙でも電話でもファックスでもいいから質問してほしい。

 この本の後ろに、ぼくの住所や電話番号、メールアドレスを書いておくから、困ったときはいつ
でも連絡してほしい。

 ちょっと先を歩いてきたどもる人間として、一緒に考えたい。ぼくはいつも君の味方だから。決
してひとりで悩まないでね。

                                        伊藤 伸二   


                                   【目次】

  「かつてのぼくとよく似たきみたちへ」・・・・・重松 清

  はじめに

  Q1. この本を書いた伊藤さんは、どういう人ですか。  どんなどもりの悩みがあったのですか。

  Q2. 「わたし」と言おうとするのに、「わわわわわたし」となったり、最近「・・・・わ」となって、ことばが出て
      こなかったりするんです。 これって何ですか。

  Q3. どうして私はどもるようになったのですか。 私が弱いからですか。

  Q4. 私のようなしゃべり方をする人は、クラスで私しかいません。 私だけですか。

  Q5. 私は友だちと話しているときはあまりどもらないのに、本読みや発表だと声が出てこなくて、
       読み終わるのにすごく時間がかかります。 みんなそうですか。

  Q6. 私は話すとき、手を振ると声が出るので、手を振りながら話します。
       みんなが変だと言います。 これは、何ですか。

  Q7. どもりを治す方法に、どんなものがありますか。

  Q8. 伊藤さんはどんな言語訓練をしてきたまですか。 その方法は役に立ちましたか。

  Q9. どもりを治す指導を受けて、完全に治らないにしても、あまりどもらなくなったり、軽くなったりすることは
       ありますか。
      少しでも改善されたほうがいいと思います。

  Q10.私はずっと、大きくなったら治ると言われてきて、治った人の話も聞きました。私のどもりは治りますか。

  Q11.どもりは自然に変わるというのはどういうことですか。

  Q12.どもりは氷山のようなものとは、どういうことですか。

  Q13.友だちが、どもっている私をからかいます。
      今はまだからかいぐらいだけど、いじめにあったらと思うと不安です。

  Q14.私には友だちがいません。 友だちががほしいのですが、どうしたら友だちができますか。

  Q15.友だちが「なんで、こんな話し方なの。 日本語しゃべってよ」とか言ってきます。
      どう説明したらいいですか。

  Q16.お母さんは、話すことに自信がないなら、ほかのことで自信をつけなさいと言います。
      何をしたら自信がつきますか。

  Q17.私がどもると、よく笑う人がいます。とても嫌なので、やめてほしいんですが、どうしたらいいですか。

  Q18.私がどもるのは気が弱いからですか。 どもることぐらいで、くよくよするなと言われます。
      悩むのも弱いからですか。

  Q19.学級代表になりそうです。うまくできそうにないので断るつもりですが、少し迷いもあります。
      どうしたらいいですか。

  Q20.なぜどもってはいけないのですか。 なぜ治さないといけないのか疑問です。
      治したいと思ったときもあったけど、今はこれも自分の個性だと思うから、治したいと思いません。

  Q21.ことばの教室はどんなところですか。

  Q22.このままどもりが治らなかったら、どんな仕事に就けますか。 就いたらいいんですか。

  【コラム】
   「やっぱりサマキャン(吃音親子サマーキャンプ)の力ははすごい」
   「ぼくは、吃音です」
   「どもりカルタ (大阪スタタリングプロジェクト編)」
   「なおしたいという気持ちから」

  ・君が幸せに生きるために
  ・日本語でどもる人の、ことばのレッスン
  ・特別寄稿  「自分の話し方を見つけるために」・・・・・演出家 竹内敏晴
  ・おわりに
  ・どもる人、親や教師が読んで役立つ本


産経新聞 2008年8月16日





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